~過去を思い出す印~
平凡な日々が過ぎ去り、気が付けば年を越した。
外はすっかり寒くなり....どの家庭もみんなこたつを出している。
冬休みも終わりを迎え、今日まさに学校が始まろうとしてる。5月に似てやる気の出ない日だ。
肩の上がらない体を無理やり起こし、通学路を歩く。
菫はどうしたかって?...アイツは呼ばなくてもくるよ
「おーーーーい!!」
ほーら、来た来た....笑
「よっ!あけおめぇ〜」
後ろから髪を揺らし走る幼なじみの姿
俺「おう、あけおめっ」
「もう1年経ったんだね〜、早いよね〜笑」
久々に見る笑顔に新鮮さを感じた
「1年の中でも色んなことあったよね〜笑」
俺「そんな大したことないだろ笑まぁ....退屈はしなかったな....うん」
「でしょでしょ〜?笑退屈しなかったのは誰のおかげでしょ〜?笑」
視線に割り込むように覗き込む幼なじみ。
「私のおかげでしょ?笑」と顔がそう主張している。
「あーはいはい、お前のおかげ笑」
「ふふ〜ん♪」
俺「調子良い奴だなぁ…」
正月の寒さは人との会話によって暖かくなり....その暖かさは新年のモチベーションになる...。
1年は本当に様々な出来事があったよ....全てが楽しい訳では無いのはもちろんだけど...良いことがたくさんな気がする....。じゃなきゃ楽しく会話なんて出来るわけない。
別れと出会いがセットかのように悲しみと嬉しさが交差する、そんな年でもあった....。
時間が経てば昼食の時間、あいつも一緒だ。
「ねねっ弁当のおかず、交換しない?」
俺「おかず?あぁいいよ、何にする?」
「やった〜♪何にしよ〜かな〜笑」
俺の弁当の中身を余すことなく見渡す
俺「でもこの唐揚げはダメだからな」
「え〜丁度それにしようと思ったのにぃ〜」
俺「はいダメ〜他のにしてくださ~い笑ほらソーセージとか美味しそうじゃんか笑」
「いやぁ〜やだやだやだぁ〜!唐揚げがいいぃ〜!唐揚げじゃないとやだぁ〜!!」
やかましく喚き体をジタバタさせる幼なじみ
俺「....お前高校生だろうが....我慢しろって....初めて見たわお前が駄々こねんの...」
「唐揚げぇ〜...食べたいぃ〜....ねぇ〜...お願いぃ〜...」
俺「ん〜...わかったわかった笑...ほら、食いなもう...」
「え?!いいの〜?!ありがと〜!♪」
諦めて唐揚げをあげると、子供のように喜んだ
彼女はまだ子供なのだろう。
俺「ハイハイ。んじゃ俺はっと....」
「いいよー?何にする?笑」
俺「んじゃ俺はこのからあ....」
「ダメ!!!」
俺「....どんだけ唐揚げ好きなんだよ....んじゃこの枝豆貰うわ」
「えへへ〜いいよ〜笑」
俺「唐揚げ以外要らんからそんな反応なんだろ?笑」
「うん!ホント唐揚げのためなら死んでもいいくらいだよ〜笑」
俺「正直なところがズレてるような....」
「そうだ!今週の土曜さー、海行こーよー笑」
俺「は?海?お前頭悪いんか?今何月だ?
海なんて入ったら上がって来れないぞ笑」
「流石に入らないよ笑砂浜とかでゆっくりしたいな〜ってさ笑...いい?」
俺「んまぁ...そういうことならいいよ」
「やったぁ!んじゃ土曜の昼に待ち合わせしようね」
俺「了解...お、授業が始まりそうだしそろそろ教室戻るか」
「そうだね、行こっか笑」
〜諸々の授業が終わり下校中〜
「ふい〜今日も疲れたな〜」
俺「そうだな〜」
「今日さそっちの家泊まってもいい?」
俺「え、なんで」
「う"....嫌そうな言い方しないでよ....親が仕事で家に居なくて退屈なんだよ〜ねーいいでしょー?」
俺「ダメも何も明日学校あるじゃん、嫌って言うかシンプルに自分の家にいろって。」
「お願い〜!」
俺「ダメだって明日学校なんだしさ〜、親いないんだっら遅くまで起きてゲームとかしてりゃいいだろうが。」
「やーだー!おーきーれーなーくーなーるー!」
俺「うるっさいな〜....夜這い仕掛けててくんなよ...?」
「何言ってんの?馬鹿じゃないの?」
俺「ハイハイ」
「ありがと〜♡」
〜自宅:23PM〜
「恋バナしない?笑」
俺「しない。寝るぞ。」
「ねー冷たいー」
俺「もう何時だと思ってんだよ…明日は休みじゃないんだぞ....ふあぁぁ....眠いよ....」
「んーわかったわかった、昔話は?いいでしょ?昔話好きでしょ?」
そういう問題ではない
俺「....昔話...?なんの(どの時代の)話?」
「んー....中学2年!」
俺「中学2年...?....あぁ...お前が男3人くらい引っ掛けてたことなら覚えてるぞ?」
「ねぇ」
俺「なんだよ、昔話だぞ昔話」
「完全に要らんこと言ってるじゃん!!!」
俺「なんて言われてもそんな中途半端なとこ覚えてねぇよ....」
「んー...じゃあその年であったことでもいいよ?」
俺「.....まぁ、ならひとつあるなぁ」
「え?笑なになになに〜笑」
俺「俺が中学の頃"から"見た長い長い夢の話」
「聞かせて聞かせて〜笑」
〜〜~〜~〜~〜~~~~~~~~~~~~~~~~
「中学二年の頃に、母が離婚した。理由は「喧嘩」だって言ってた。
つい俺は「しょうもなっ....」と漏らしてしまった...。
すると母は俺の肩を掴み俺の目を見て言った
「傍から見れば喧嘩別れなんてしょうもなく見えるでしょうけれど、当事者の目線から見れば喧嘩は理由があってしてるの。夫は浮気してた、妻として許せなかった、だから怒った、だから泣いた、だから苦しい気持ちになりながらも離婚の判断をしたの。わかる?」
そう俺に訴えかける顔は、今にでも泣いてしまいそうな顔をしていた.....。
「大人の恋愛は難しいのよ...子供のように「可愛い!かっこいい!優しい!好き!」なんかじゃなくて、多少のタイプや求めるものもあるけれど....一番必要なのは"愛と将来"なの。愛が必要なのはどの世代も同じよ、でも小学生や中学生が、2人が大人になっても付き合って結婚しようね!なんて思ってるカップルは居ない。大人にはその考えが必要なの。
どれだけ愛するかじゃない、2人でどれだけの将来を共にするかが大事なのよ」
そう言う母の目は涙で濡れていた、俺は母から目を背けた。
「まだまだ子供のあんたにこんな事言うのは間違っているかもしれない....けれどこれが恋愛...全てが輝かしい訳じゃないの......。これからあんたも好きになる女性が出来ると思う。もし想いを伝え、その想いが実り付き合うことになって、結婚まで行く事を考えているのなら.....好きになった人をしっかり大事にするのよ。」
空気は最悪、押しつぶされそうなくらい空気が重かった....。
俺は何も言わずに自室へ戻りベッドに入った。
その日の夜のことは覚えてない。気が付けば朝になっていた。
2日3日前までいた父親の姿が見えない、どうやら本当に離婚してしまったようだ。最後にした会話....なんだったっけ....?"行ってらっしゃい"だったか?
それから2年半の間、父親に会えない生活を送った。
そして現在も会えていない
しょうもないと言った俺だが、父親への愛想が尽きた訳では無い。会えるものなら今すぐにでも会いたいと今も尚思っている。気づけば俺の夢は"父親に会うこと"になっていた、まだまだ夢から覚めないみたいだ....なんとも寂しい夢だ....。」
俺「....これが長い長い夢のお話さ」
「......離婚してたの?!」
俺「まぁそうなるわな、言ってなかったしな笑」
「そうだよそうだよ〜!知らなかったよ~」
俺「まぁ...そういうわけだ。今は母親と2人暮らし、不自由無い生活さ」
「もっと早く言ってよ〜!」
俺「ハイハイごめんごめん、もう1時になるから寝るぞ〜明日も学校あんだからさぁ」
「え〜まだ寝たくなーいー!話そーよー!」
俺「まだなにか喋んのかよ、もう寝るって言っただろ?」
「やだやだやだやだ〜!!」
俺「っ....わかった、わかった....!付き合ってやっから明日サボんなよ?」
「明日じゃ無くて今日だよ〜?笑」
俺「黙ってろ」
結局朝まで起きてしまって眠いまま学校へ行くことになった。会話の内容は......殆ど忘れた。
いかがでしたでしょうか?
次回もご覧下さい!