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夜の宮の訪問者

お待たせ致しました。

番外編の掲載となります。

不定期の上、かなりゆっくりの更新になると思いますが、よろしくお願いします。

本編再開はもう少し先になります。




遮るものは何もない、空に広がる満天の星空。



煌々と輝く星々に照らされて、夜の世界はかろうじて視界を保つ事が出来る程度だった。



だがそれが何とも言えない神々しさを秘める。



視線の先には、この地にしか咲かない“星光花“の花畑が広がっている。



花々の中をゆっくりゆっくり歩を進めながら、星々の光をその身に集めぼんやりと光り輝く特徴を持つ小さな野花の群衆に、彼はふわりと柔らかな笑みを浮かべた。



「ミヤビ」



背後から響く己の名を呼ぶ声に、彼はゆっくりと振り返る。



そこにはこの夜の世界の主であり、愛しい夫の姿。



「アシェラン」



ミヤビの心が弾み甘やかな声音で夫の名を呼ぶと、アシェランは端正な顔立ちを綻ばせミヤビの側に歩み寄って来た。



「相変わらずここが好きだな」



アシェランの優しく響く低い声音に、ミヤビはフワリと柔らかな笑みを浮かべた。



「そりゃあこんなにも神々しくて、綺麗な花々が広がっているんだ。アシェランが僕の為に作ってくれたこの花畑は、僕の宝物だ。好きに決まってる」



「気に入ってくれて嬉しいが……あまりそちらにばかり構うな。さすがに妬けてくる」



複雑そうに顔を顰めるアシェランに、ミヤビは一瞬キョトンとする。



そしてすぐにクスクスと可愛らしい笑い声を上げた。



「……もう。他の誰でもない、君がくれたものだからこんなにも愛おしいんだよ?」



「それでもだ」



「あらら。ヤキモチ焼きさんには困ったものだねぇ」



それなりに身長のあるミヤビではあるものの、自分よりもかなり背の高いアシェランの顔を下から覗き込みながら、ミヤビは両手を伸ばしアシェランの頬を優しく包む。



「僕はこんなにも君を愛して、こんなにも君に愛されて幸せなのに」



ミヤビの甘やかな言葉と微笑みに、アシェランは歓喜に胸を躍らせ壊してしまわぬようにミヤビをそっと優しく抱きしめた。



「ミヤビ……俺だけの愛しい番。俺の全てはお前だけのもの。そして、お前の全ても俺だけのものだ。この世界に俺とお前以外、誰も、何も、要らない」



他人が聞けば何とも重い愛の言葉だと思われそうだな、とミヤビは心の中で苦笑いをこぼす。



だが、ミヤビにとってはそんなアシェランの愛がたまらなく甘美で安心をもたらすもの。



アシェランの腕の中に包まれるこの時間は何よりも幸福だった。



「……それで?何かあった?」



アシェランの顔を見上げながらミヤビがそう声をかけた途端、アシェランの顔が何とも言えない嫌そうな表情に歪む。



「……何でわかったんだ?」



「僕、君の事に関してはどんな喜怒哀楽も見逃さない自信があるのさ」



アシェランの腕の中にも関わらず、ミヤビはどうだと言わんばかりに胸を張る。



そんなミヤビの仕草に、アシェランは嬉しそうに目を細めた。



「フッ……恐れ入ったよ」



「それで?何があったの?」



「さっき懐かしい同族が念話を飛ばして来た。番を連れて間もなくこちらに到着するらしい」



「へぇ!お客様なんて初めてだね!しかも番の方と一緒だなんて……どうしよう、僕ちゃんとおもてなし出来るかな」 



「ふん!そんなもの必要ない。俺達だけの巣に勝手に乗り込んで来るんだぞ。全くアイツは……」



「アシェランってば……その方は君に久しぶりに会いたかったんじゃないの?それか番の方を紹介したかったのかな?」



「俺達竜はそんな同族意識なんぞ持ち合わせてはいない。それに番を他人に会わせたいなんぞ思わん。番は己の至宝だ。大切に大切に己だけの空間に隠しておきたいはず……だが、何やら“約束を果たしに行くだけだ“とか言っていたが……俺、アイツと約束なんかした覚えがないんだが……」



ブツブツと不満をこぼすアシェランに、ミヤビは苦笑いを浮かべる。



「何にしてもお客様が来られるなら宮に戻ろう?せめて簡単なおもてなしの準備だけでもしたい。アシェラン、手伝ってくれるだろ?ね?」



「……アイツらを迎える為っていうのが気に食わんが……ミヤビの願いを無碍にする俺ではない。まぁ仕方がない、手伝おう」



可愛らしくお願いをすればアシェランが断るはずもない事を知っているミヤビは、彼の手を引き、共に2人が生活する宮へと戻った。



この世界はアシェランがミヤビと共に過ごす為だけに創造した、2人の為だけの特別な世界。



ミヤビには“特殊な体質"の事情があり、ここは永遠に陽の光が差すことのない、常に満天の星々が輝く“夜だけの世界“だ。



そしてここには2人以外、誰もいない。



最初アシェランはミヤビに不自由をさせない為に、かつてミヤビがいた世界で世話になったキサギから、彼女が作った形代を貰い使用人を用意するはずだった。



だがミヤビはそれを断った。



やれる事は自分でやりたい、と。



アシェランと共に協力しながらやりたいのだと言った。



ミヤビの希望をアシェランは喜んで受け入れた。



2人が住まう宮は広大で、ミヤビの生まれ育った皇国の古い時代にあった伝統的で優美な寝殿造となっていた。



ただ来客などまずあり得ない為、寝殿は主居室として、対屋と呼ばれる部屋は食堂や気分を変えて寛ぐ部屋として使用していた。



今回は初めての来客という事もあり、2人は湖のある庭園を一望出来る釣殿と呼ばれる吹き放ちの一室で来客を迎える事に決めた。



簡単な菓子とお茶の準備を終えたミヤビは初めての来客にソワソワとする。



そんな彼をよそに、アシェランは少し不貞腐れ気味に籐で編まれた大きめのソファーに寛いでいた。



暫くすると、満天の星空の空間が歪み、そこからぬぅっと白い巨体の竜が現れゆっくりと広い庭園に降り立った。



その片手には美しい女性が大切に抱えられているのが見える。



「来たか」



面倒臭そうな声を上げたアシェランがソファーから起き上がると、ミヤビの手を取り釣殿から白竜の元へと歩み寄って行った。



降り立った白竜はゆっくりと地面に己の番を降ろすと、その巨体を人型へと変化させ、キョロキョロと周囲を見回す番に安心させるように微笑んで見せていた。



そんな同族を視界に捉えるや、アシェランはフンスと鼻息を荒げる。



「そのまま番と共にまっすぐ己の巣へ向かえば良いものを……俺とミヤビの時間を邪魔しやがって。何しに来た、ジェノヴァ」



「喧しい。我とてそうしたいところを、敢えて来てやったのだ。喜べ」



「喜ぶ?!ハンッ!ふざけた事を……必要ならば念話で十分だろうが」



「我は約束を果たしに来ただけだ」



「俺はお前と約束なんぞした覚えはないがな」



「自惚れるな。誰がお前との約束などと言った?」



「……何だと?」



「我はある者に世話になってな。その時に頼まれた事を果たしに来ただけだ。そうでなければわざわざ訪れはせん」



「ある者だと?ハッ!お前程の竜が誰かの世話になるなんてな。いよいよ腑抜けたか?」



「ぬかせ。その者にはお前も相当世話になったはずだぞ」



「俺が?……俺は誰かの世話になった覚えなど……」



そう言いかけた所でアシェランはハッと息を呑む。



脳裏に“ある人物“の姿が過ったその時、大きく目を見開いた。



「まさか……」



「漸く気付いたか。我はキサギに頼まれた。其方に会ったらよろしく伝えてくれ、とな。そして彼女は、其方の番と我の番を会わせてやって欲しいと願ったのだ。それと共に、其方の番が元気で幸せに暮らしているか代わりに見て来て欲しい、とな」



「キサギ?!貴方はキサギを知っているのですか?!」



アシェランの隣に静かに佇んでいたミヤビがキサギの名を耳にした途端、血相を変えて前へと躍り出て声を上げた。



「……其方がアシェランの番か」



「はい。ミヤビと申します。不躾に申し訳ありません。ですが、どうか教えて下さい!何故住む世界の違う貴方がキサギを知っているのですか?!彼女は生きているのですか?!」



「待て、ミヤビ!」



「だって、アシェラン!キサギが生きている筈がないんだ!僕の“先読み“は絶対だ!キサギだって僕の能力の確実性を知っている!彼女は確実に“18歳で死ぬ“って僕は予知したんだ!その彼女が本当に生きているのか知りたい!」



「キサギ様ならば生きておられますよ?」



「……え?」



焦燥に駆られるミヤビがジェノヴァの隣に佇む女性へと視線を向けると、彼女は柔らかな微笑みを浮かべながら美しいカーテシーをして見せた。



「初めまして。闇竜アシェラン様、そしてミヤビ様。私は白竜ジェノヴァの番、シエラと申します。こちらに来る前は、ジェノヴィア王国という国の第1王女でございました。キサギ様とは我が生国の隣国、イギリー王国のとある都市で不良達に絡まれている所を助けて頂いたご縁がございます。ミヤビ様、ご安心下さいませ。あの御方は私達の世界において、英雄とも言えるS級冒険者として活躍していらっしゃいます」



「……冒険者?……英雄?……キサギが?」



「はい。他にも歴戦の猛者の様な方々もご一緒でしたわ」



混乱する頭を制御しきれず掠れた声をこぼすミヤビに、シエラは朗らかに答えた。



「……四天将どもだな。アイツらも一緒か……」



シエラの返答に、アシェランはキサギと共に在った式神達を思いおこす。



「我はキサギの記憶を見せて貰った。確かに前の世界で死に、何故かはわからんが記憶をそのままに我が番の世界に転生したようだ。我とシエラはキサギに出会い、世話になったのだ」



その言葉に、ミヤビの目に涙が浮かぶ。



「……キサギが……転生?……生きて……いるんだ……彼女は……生きているんだ……」



うわ言の様に呟き小刻みに体を震わせるミヤビを、アシェランは優しく抱きしめた。



「……良かったな、ミヤビ」



「あぁ……本当に……良かった……」



「……ジェノヴァ、今回だけ宮へ入る事を許可してやる。そのかわり、その話、詳しく聞かせろ」



アシェランの言葉にジェノヴァはゆっくりと頷いた。







アシェランの番のミヤビは男性です。

ちなみにアシェランも竜種の雄です。

まぁ、こういう愛の形もアリかな、と。。。

ミヤビの詳細は次回明かされます。

お楽しみに。

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