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幕間.愁嘆、憎悪、憤怒……そして   〜第2章 了〜





苦しい……



もう全てがどうでも良いほどに、苦しい……









一生懸命学び、一生懸命体得し、一生懸命期待に応えようと努力した。



結果、誰よりも美しく、誰よりも博識で、誰よりも魔法に優れた。



良い子にしていたでしょう?



あなた達の望む人物像そのままに、あなた達の言われるがままに、"私"という傑作を作り上げたでしょう?



なのに、何故?



誰も見てくれない。



褒めてくれない。



努力を認めてくれない。



愛してくれない。



何がいけないの?



何がいけなかったの?



何が不満なの?



理由もなく忌避されても、心を寄せ歩み寄った。



なのに意味もなく拒絶され、比較され、中傷されるばかり。



嘲りと憐れみに塗れた周囲の目に吐き気がする。



一部には好反応を得られてはいるけれど……



それは所詮、私という存在が都合の良い駒として使えるかどうか、それだけにすぎない。



本心から私に手を差し伸べてくれる人なんて、この世界にいるわけがない。



家族ですらそんな事も流せないのか、御せないのか、出来て当たり前だと突き放されるだけ。



誰にも助けを求めてはならない状況に苦しみ悶えながらも、常に微笑みの仮面を貼り付ける度に、心が氷に覆われるかのようにどんどん冷えていく。



外に目を向けると、人々が笑顔で幸せそうにしている。



家族仲睦まじく、恋人同士仲睦まじく、友人同士仲睦まじく。



私にはないものを、彼らは当たり前のように享受している。



私は苦しいのに。



こんなに苦しいのに。



こんなにこんなに苦しいのに。



私はこんなに苦しみ悶えているのに。



何故?



何故あなた達だけ幸せなの?



羨ましい。



妬ましい。



憎らしい。



……許せない。



誰も彼も、許せない。



……あぁ、そうか。



そうなのか。



彼らは皆“敵"なのか。



私の美貌が、知識が、魔力が……存在が羨ましく、妬ましく、憎らしいのか。



だから誰も私を助けてくれないのか。



だから皆、私を苦しめるのか。



だから、私を愛してくれないのか。



私の心を殺すのか。



そうか……



そうだったのか……



なぁんだ。




………




ふざけるな。



ふざけるな、ふざけるな!



何故私が、私だけが苦しまなければならない?!



あぁ、頭が回らない。



言葉が、思考が、うまく纏まらない。



私が壊れていく。



私が壊されていく。



頭の中で喚き声や囁き声がノイズとなって鳴り響く。



これは誰?



誰かの声?



……いや、これは……



私の声?



このままでいいの?



なされるがままでいいの?



誰かに壊されたままでいいの?



嫌だ!!



壊されてたまるものか!!



……いいだろう。



ならば、私はあなた達……いや、お前達に私の憎しみと怒りの炎をくれてやろう。



慈悲などあげない。



お前達のような愚かな存在など、消えてしまえばいい。



あぁ……そうだ、何もかも、誰も彼も、消し去ってやればいい。



そうすれば良いのだ。



そうすれば静かで、自由で、優しい世界が訪れるはず。



なんだ、簡単な事じゃないか。



その為には、まずこの忌まわしい“人間“という器を捨てなければ。



お前達と同じ種族で在るなど……悍ましさで吐き気がする。



私は新しい……いや、本当の“私“に生まれ変わるのだ。



だって私は"特別"なのだもの。



生まれてくる前、私は母親の腹の中にいた時に“世界樹“の神託を聞いたのだ。



『其方は“神子"の力を持つ者。運命の輪は廻り始めた』



“神子“?



……私は……みこ……なの?



そう……私は神の子なのだ!



運命すら私の手の中で踊るのだ!



これは誰も知らない。



家族ですら知らない、世界樹と私だけの秘密。



だから“特別な私“の魔法でもってすれば、そんな事容易い。



ただ……そうだなぁ。



折角だし、ちょっと悪戯をしかけよう。



例えば……



皆の目の前で死んで見せる、とか?



これ、面白そう。



ただ死ぬのは癪だから、少しでも呵責の念に苛まれるような死に方を演じてやろう。



あぁ、いい事を思い付いた。



次の茶会であのお花畑王子を散策に誘い出し、あらかじめ建物に時限式の術式を仕込んでおいて、爆破してやろう。



作為的に見られないように自然な崩落を装うなんて、私の手にかかれば造作もない事。



そうして崩れる瓦礫からあいつを助けるように庇えばいいじゃないか。



悲劇のヒロインの出来上がり。



そして私の“空っぽの体“に慌てふためき、せいぜい己の犯した罪に苛まればいい。



あはは。



最高じゃないか。



あいつは腰を抜かすのだろうか。



俺は悪くないとか叫ぶのだろうか。



いや、恐れ慄いてみっともなく叫び声をあげながら逃げ出すに違いないな。



家族の皮を被ったあいつらは、出世の駒を失って悲嘆に暮れて慌てふためくに違いないな。



ふふふ、ざまぁみろ。



……あら、私、今心から笑った気がする……



心から笑うと、こんなにも身も心も軽くなるのか……



だったらもっと……もっと……もっとあいつらを壊してやろう。



あぁ、でも1人でやるにはちょっと大変かも。



……そうだ。



魔人を使おう。



彼らは人間に追いやられた可哀想な存在。



人間を殺戮の為の玩具と見なす存在。



丁度いい。



彼らに私の慈悲をあげよう。



私の魔法を使って彼らを強化してあげよう。



私にはそれだけの力も知識もある。



家族も国も知らない力。



だって知られると、あいつらはこれ見よがしに利用しようとしてくるのが目に見えてるから。



誰がお前達の為に利用されてなどやるものか。



もし魔人も私を裏切るのなら……彼らも消せば良い。



私を愛してくれない者など、全て消えてしまえば良い。



強化の魔法のついでに、ちょっと手を加えておけば簡単だ。



ふふふ。



あぁ……楽しみだ。



一気にやるのではなく、ジワジワと追い詰めてやる。



あぁ……楽しみだ。



人間の寿命という縛りから解き放たれれば、時間なんて無限にあるのだ。



ジワリジワリと首を絞めて。



ジワリジワリと心臓を握って。



ジワリジワリと苦しめてやる。



愚かなお前達なんて、簡単に壊してなんてあげない。



苦しんで、苦しんで、苦しんで。



最後に苦しみ悶えながら、絶望して逝けばいい。



その様を、私は最前列の特等席で優雅に見届けてやろう。



ふふふ。



あぁ……楽しみだ。







さぁ、始めよう。



破滅のショーの、幕開けだ。












*ここで第2章は終了です。



お知らせしました通り、掲載は暫くお休みとなります。



どうぞよろしくお願いします。



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