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14.出発の朝

作品紹介の文面を一部変更しております。掲載を不定期とさせて頂きました。仕事の関係上、時間が出来た時しか上げられず申し訳ありませんが、なるべくテンポよく掲載出来るよう努めますね!どうぞよろしくお願いします。それでは続きをお楽しみ下さいませ!





翌朝、早朝。



朝の光が木々の隙間から差し込み、それを浴びながらキサギはアカガネを伴って自邸周りを軽く散歩していた。



魔力は昨夜感じた時と変わらず清々しく、魔獣や魔人の禍々しい気配を一切感じる事はない。

 


「不思議な森だわ。時間が空いた時にゆっくり探索してみるのもいいかも」



「昨夜御前が幻術魔法と結界を展開して下さいましたので、この周辺は安全でしょう。使用人何名かでこの周辺を詳しく探索をさせ、私は森全体と辺境も見ておきましょう」



「なら予備の形代何枚かと私の髪を少し渡しておくから、アカガネの好きに使って。後、王都へも誰か潜らせておいて。一応あっちの情報も仕入れておきましょ」



「御意」



彼女の髪それ自体には魔力が潤沢に込められており、それを媒体に形代を形成させると、戦闘使用人や隠密に長けた使用人が出来る。



場合によって好意的な精霊や精霊獣でも見つかれば、彼女の髪を使って契約を結ぶことも可能だろう。



アカガネは主からの心遣いに恭しく一礼し、早速行動へ移し、彼女は準備の為に自邸へと戻った。



そして数時間後、屋敷を後にしたキサギ達はランテルの人通りの少ない場所に転移した。



朝からランテルの街は忙しそうに賑わいを見せている。



早速ギルドへと足を運ぶと、朝から既に慌ただしさに包まれる室内はスタッフが新しいクエストの束を手にランク毎にボードに貼っており、ボード前はそれを求めて人だかりが出来ている。



そんな様子を横目に捉えながら、待ち合わせ場所の会議室へと向かう階段を登っていると「キサギー!」と階下から明るく声をかけられる。



振り返り見下ろすと、天狼のリアが手を振りながら「おはよー!」と駆け寄ってくれ、彼女の後ろには軽食と飲み物を抱えたベリルもいた。



キサギも2人に軽く笑顔で「おはようございます」と挨拶する。



ベリルは神秘的な笑顔の美しい彼女に少し頬を赤らめ、コホンと咳払いしてから彼女に「おはよう」と挨拶を返した。



「グエンとハルトはまだなんだけど、ラミラと今日同行する2人は、もう会議室にいるよー!」



リアは朝からいつもと変わらず元気な様子で、軽快な足取りで先に階段を駆け上がっていった。



遅れてゆっくり上がって来たベリルが、すれ違いざまに声を掛けて来た。



「朝食は済んだかい?」



「はい、食べて来ました。ベリルさんは今からですか?」



「あぁ、これ?これは後から来るグエンとハルトの分だよ。あの2人は朝が弱いから、いつも集合時間ギリギリなんだよ」



苦笑いするベリルの手元からは、コーヒーの苦味ある爽やかな香りと、出来たての軽食の香ばしい良い匂いがする。



シュリはさっきたらふく朝食を食べたにも関わらず、彼の持つ軽食に興味津々のようで「ちょっと俺、後から行くわ!」と階下にある売店へと早足に階段を降りていった。



「シュリー!私の分のコーヒーと皆の分の飲み物もよろしくー!」



さっきまでそこにいたはずのシュリはもう既に売店手前まで行っていたようで、「おー」と少し遠くから返事が帰ってきた。



そうしてベリルと揃って階段を上がり会議室の扉をノックし中へ入ると、席にはラミラと先に戻ったリアが談笑しており、奥のソファーに見ない顔の2人の男性が座って寛いでいるのが見えた。



「おはよう」



と、入ってきたキサギ達に気付いたラミラが声を掛けてくる。



キサギは会釈し「昨日はお疲れ様でした」と挨拶を返した。



先程購入したはずの軽食を一瞬で食べ尽くしたホクホク顔のシュリがもうキサギの側へと戻ってきており、頼んでおいたコーヒーを彼から受け取ると、中央のテーブルまで歩み寄った。



キサギ達と一緒に来たベリルはテーブルに先程の軽食を手際良く並べ、グエンとハルトがいつ来ても良いように準備をしている。



部屋の中はコーヒーと軽食の良い香りが漂い、これから討伐に向かうとは思えない程穏やかな空気に包まれていた。



「本当ならグエンがやるべきなんだけど、ごめんなさいね。あいつ、いつも朝はギリギリなの。今日同行してくれる2人を先に紹介するわ」



席から立ったラミラがキサギ達を呼び招き、ソファーで寛ぐ2人のほうへ案内してくれる。



寛いでいた2人が気付き立ち上がると、笑顔で迎えてくれた。



「よぉ!今日はよろしく!!」



「昨日の、見てたよ!すごかったね!」



明るく挨拶をしてくれた彼らは昨日マティアスが話していたジムで一部始終を見ていた2人で、このギルドに所属するA級冒険者だ。



「こちらがカイルさん」



ラミラが紹介してくれた彼は、シンプルな明るい茶髪の堂々とした出立ちの男性だ。



「カイルだ!ランクはA級、上級剣闘士だ!よろしくな!」



そう豪快な挨拶をしてくれたカイルは年齢が26歳で、このランテルで結婚して家庭を持ち、可愛い娘さんがいると教えてくれた。



「そしてこちらがテリーさん」



続いて紹介された彼は面持ちがカイルに似た、こちらは深めの茶髪の爽やかな男性だった。



「テリーだよ。ランクはA級で、俺はメインが守護戦士でサブが薬剤師だよ」



テリーはカイルの1つ下の25歳で、彼らは兄弟でデュオとして活動しているらしい。



しかもテリーは戦士の上位互換の守護戦士と薬剤師という、珍しい2つジョブ持ちという。



キサギ達も軽く自己紹介をして、挨拶を交わした。



「上位互換の守護戦士だけでもすごいのに……2つジョブ持ちって、珍しいですね」



「俺たちは2人とも攻撃系で、回復役がいないと何かと困ると思ってね。後から薬剤師のジョブも取ったんだ。余ったポーションはギルドが買い取ってくれるから、腐らせることもないしね」



「クエストに出れば、その辺に自然に生えてる薬草ですぐに魔法生成してポーションを作ってくれるから助かってるんだ!」



はにかみながらそう答えるテリーと、弟の仕事ぶりを誇らしげに語るカイルに、キサギは何やら家族の温かみを感じ自然と笑みがこぼれる。



(異空間収納ボックスなら、時間経過なんて関係ないから腐らせることなんてないけど……やっぱりこの世界にはないかぁ……)



こういった何気ない会話から情報を精査しつつ、魔法の使用には気をつけなければと彼女は改めて思う。



「お2人の同行に相応しい仕事をするとお約束します。どうぞよろしくお願いします」



美しい笑顔で綺麗にお辞儀するキサギに、2人は思わず頬を赤らめる。



宵闇色の髪に白い肌がよく映え、美しい容貌の彼女はそれでなくても目を引く。



「よ、よろしくね!しっかりフォローするから!」



10歳も歳下の彼女の美しく堂々とした対応に、あたふたと答えるテリーはどうやら女性慣れしていないようで、カイルとラミラは苦笑いしている。



すると扉が開きグエンとハルト、そしてマティアスが続いて入って来た。



「お待たせー」



と気怠げに挨拶するグエンはいつもの無駄にキラキラした感じはないが、眠そうな顔はそれはそれで女性受けしそうな儚げさのある色香を放っている。



「揃ってるな。では出発前の簡単なブリーフィングを行う。皆、席に着いてくれ」



朝からカッチリきめているマティアスのテノールの声が会議室に響くと、皆緊張感を持った真剣な面持ちに変わる。



キサギ達は2人に軽く挨拶をして離れ、席に着いた。



シュリに買ってきて貰ったコーヒーをひと口音を立てる事なく啜り、頭がスッキリする感覚に改めて身を引き締めた彼女は正面に座るマティアスへと視線を向けた。



「グエンとハルトは食事をしながら聞いてくれ。他の皆も、気にする事なく飲み物を摂りながらで構わないからな。……さて」



マティアスが持ってきた書類を広げ、ブリーフィングを始めた。



「昨日も話したが、領境の関所街リンデルの森の奥のダンジョンでネームドの上位魔獣が確認された。周辺の魔獣たちを束ねており、被害も出ている。被害拡大の阻止の為、昨日異例ながらS級冒険者に昇格した神楽旅団に討伐に向かってもらう。天狼とカイル・テリー兄弟は彼女らのサポートを頼む」



マティアスがテーブルに地図を広げ、自分の万年筆を胸ポケットから取り出すと、コンッとそれで指し示す。



「まずリンデルにあるギルドの出張所で情報収集。ここを拠点とする。その後準備が整い次第森へと入り、そこで採集クエスト中の冒険者の様子も見ておいて欲しい。ダンジョンへ魔獣討伐や魔石採集に入っている奴らもいるだろうから、彼らからも情報を得ながら対応にあたってくれ。質問は?……ないな。ではキサギ」



周辺地図を頭に入れていたキサギが、彼に呼ばれて顔をあげる。



「今回は君達がメインだ。リーダーとして、皆に挨拶を」



先程までの緊張感を解きほぐすように彼は目元を細め、優しい父親のような声音でキサギに声をかけた。



口元に笑みを浮かべ彼女が首肯し、そっと席から立ち上がる。



「先程ご紹介にあずかりました、神楽旅団のリーダーを務めるキサギです。皆さんのサポートに相応しい仕事をするとお約束します。どうぞよろしくお願いします」



そう挨拶する彼女からは、可憐な見た目の少女ながらも独特の圧倒的存在感と神々しさをこの場にいる皆が感じとっていた。



昨日S級冒険者となったばかりなのに既に歴戦の猛者のような錯覚に、何故か安心感さえ覚える。



皆の胸に広がるそれは、もはや彼女がS級に足る絶対的信頼者であると、そう言わんばかりの高鳴りだった。



そして彼らは新たなS級冒険者らと共に、リンデルへと討伐の旅へ出立した。



そこで大いなる災難が待ち受けていようとは、今の彼女らはまだ知る由もない。



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