4.初仕事の音
翌朝ボイスはカンカンカンと鉄を打つ音でブラックのベッドの上で目が覚めた!
枕元には銀貨二枚置いてある、昨日の夜はいつ寝たか覚えてないほど疲れ切っていたボイス、覚えているのはブラックの匂いがどこか懐かしく心地良かった事
服を着替えキッチンへ向かうボイス
キッチンには三人分のサンドイッチとフルーツがならんでいた
キッチンの奥に地下に繋がる階段見つけるボイス
鉄を打つ音がさっきより強くボイスの耳に響く
仕事を覚えるために準備したメモ帳と鉛筆を手に
急いで階段を降りるボイス
鉄を打つタイミングが止むのを待つボイス
「す、すみません!ね、寝坊しました!」
熱した鉄を水につけるブラック
ジュゥ…
「おぉ!ボイス!おはよう!
昨日はだいぶ疲れてたみたいだな!よく寝れたか?」
「はっはい!」
厳しそうな2人が怒らない
「いいとこにきたのぉ坊主!」
「よし休憩じゃ!」
ガンジスが立とうとしたとき
「ダメだ伸ばしまではやる!」
とブラックがガンジスを止める、その流れでブラックがボイスに軽く注意した
「ボイス!メモ取って仕事覚えようとしてんじゃねぇよな?ここは学校じゃねぇからな!体で覚えろよ?」
ブラックはかつて無口だったガンジスの技術を体で覚えた自分を思い出していた
「はい!」と返事をするが
母さんとは真逆な事を言われて少し混乱するボイスであった
「ジジィ!力強すぎんだよ!もっと強弱をつけて打てねぇのかよ!」
「いちいちうるさいのぉ!」
黙って見ているボイスだったが自然と体が動き始める
壁にかけられた金槌を持ち
ガンジスの打った後にテンポよくボイスが打ちはじめた
ガン、カン、ガン、カン
ブラックの理想に近づく鉄が次第に刀の形に変わって行く、水に浸け、熱して、打つを繰り返した
「よしいいできだ!」
「ボイスお前はセンスがいいぞ!誰かに言われてやるのは作業だ!自分から動くこれが仕事だ!」
卒業して3日目、ボイスが何か心にグッとき始めた
「は、はい!」
ガンジスが懐かしそうな顔をする
「昔の誰かさんみたいな子じゃのぉ!ケッケッケ」
グッと二人が背中を伸ばし何も言わずに
ガンジスとブラックが上がって行く
慌ててボイスもついて行く
「あー疲れたのぉ!朝飯じゃ朝飯!」
机の上に準備された朝食を三人で囲んだ
「あのぉご飯は誰が準備してくれているんですか?」
口の中をサンドイッチでパンパンにしたガンジスがブラックを指差し、慌てて飲み込み話し出す
「こいつじゃよ!こいつは口は悪いが飯はうまいんじゃ!」「昼はラーメンがエェのぉ!」
ニヤリと笑うブラック
「さすがジジィ!昨日の夜に出汁は仕込んであるし麺は寝かせてある!ニンニクたっぷり味噌ラーメンだな!」
ボイスは何の料理かわからないでいた
「ラーメン?とは何ですか?」
ブラックが簡単に説明してくれそうな顔をしている
「昼に食えばわかる!」
「百聞は一見にしかずだ!」
ブラックの説明を期待したボイスの答えと違いすぎた…
「あーーそういえば枕元に銀貨が置いてあったんですがあれは…?」
きょとんとした顔でガンジスが答える
「給料じゃよ?」「背中流しの仕事をしたじゃろ」
「足りんのか?」
驚くボイス
「いやいや!僕からしたら1日の仕事で銀貨二枚なんて大金ですよ!」
ホッホッホ
「ならよかったのぉ!」
食事の時間はやはりすぐに終わる三人だった…
無意識に皿を集め洗い始めるボイス
2人が真面目に仕事の話を始めた
「今日は鉄打ちは終わりかのぉ?」とブラックに尋ねる
「あーそうだな微調整したら少し時間をおかねぇとな!」「研ぎは明日やるからそんとき鞘や頼むわ!」
仕事の時の二人の顔は何かと戦っているかの様に真剣で真面目だった!
「じゃぁワシは少し湯で汗を流すかのぉ!」
「今日の仕事は終わりじゃ!」
どうやら二人の仕事は効率よく短時間派みたいだ…
「そうだ!ボイス!あのナイフどこで手に入れた?」
ボイスは母からあのナイフをもらった夜を思い出していた
「このナイフは母さんの宝物なの!でも誰かにこのナイフの事を聞かれたら、質屋の商人から譲ってもらったと言うのよ?」
「あーあのナイフは質屋の商人から譲ってもらいました」
「そっかそっか!ナイフを質屋に入れたやつなんて知らないよな?」
「そうですね、ちょっとわかりませんね…」
ブラックには本当の事を言うか迷うボイスだった
ブラックが地下の作業場に向かう、ボイスもついて行く
小さめの金槌でトントン微調整する
見様見真似でボイスも金槌で打ち始めた
ブラックの調整後の刀を見るボイス
「ちょっと貸せ!」
刃を横にしボイスに見せる
「ここをなるべく平らにする様に打つ」
「やってみろ!」
ボイスはブラックのやり方を体で覚え始めた
そんな二人を後ろで見守る全裸のガンジス…
に気がつくブラック
「全裸で眺めてんじゃねぇぞクソジジィ!」といいながらも笑うブラックとガンジス
そしてボイスがいるのであった!
楽しくはしゃいでいると…
トントン、トントン
誰かが玄関のドアを叩く音がする、ガチャっとドアの開く音と同時に誰かが入って来る足音がコツン、コツン、と近づいてきた…