1.始まりの音
俺の名はボイス・オート
15の歳になった、もう大人の仲間入りだ
今日無事に9年間の学生生活が終わる
と同時に
卒業証書に学校と国が決めた職業を記載される
女性は卒業と同時に結婚することが可能となるが
大体の女性は職業をもらい職につまづき結婚することが多いらしい
そしてその職業を拒んだり諦める者は
国の兵、農家、漁師、職人として働く事となる
だから最初から兵を目指す者も少なくない!
兵を目指したほうが出世は無いが楽だからだ
だがこのボイス・オートは違う!
この世界の英雄オールマスターを目指している!
オールマスターとは、
剣士→剣勇者→ソードマスター
槍使い→槍勇者→スピアマスター
オノ使い→オノ勇者→アックスマスター
楯使い→盾勇者→シールドマスター
その全てを制覇したものがオールマスターと呼ばれる
そしてその中でもソードマスターになるのはかなり厳しい
それは他の武器よりも剣の種類が多く使いこなすのを諦め剣勇者で止まるのが現実だ
魔物がウヨウヨいるこの世界には
当然いろいろな職業がある
剣士、槍使い、オノ使い、盾使い、弓使い、魔法使い、魔草使い、魔獣使い、
当然この職業は
魔物を討伐しお金をもらう人気な職業だ
次に人気なのは商人だ
だが誰でもなれる職業ではない
常に安全なとこでゆったりと生活出来る
いわゆるボンボンの家系だ
兵にもなれないような老人を雇い
農業、漁業、で食材を仕入れて
国の生活に協力している
武器の仕入れなんかも商人の仕事だ
1番人気のない職業が鍛冶職人だ
地味で汗臭いイメージが強い
当然商人に言われた通りの品物を作らなければならない
山奥の鍛冶職人を除いては
山奥の鍛冶職人の所に就職が決まると皆行かずに
兵士になることを選ぶらしい
それもそうだ魔物がウヨウヨいる山奥に
無事に行けるはずもなく、住んでいるのも魔物という噂だ
そして15年前この学校で剣士を選ばれたのに鍛冶職人に行った卒業生が1人行ったきり
誰も姿を見る事は無かったらしい
そして一人一人に卒業証書が渡されていく
卒業証書は裏にして配られ
皆が一斉にめくり職業を知ることとなる
校長「それでは皆さんめくってください」
「卒業おめでとう」
俺は剣士だ俺は剣士だ!
ボイスの目に映った文字は
「山奥の鍛冶職人」
途方に暮れるボイス
友達がかけよる
「ボイスは何だった?剣士だったらパーティ組もうぜ!」
浮かれた友達の目に鍛冶職人の文字が飛び込む
「ご、ごめん」
学校を飛び出すボイス
涙をこぼしながら、学生時代の自分を思い出し
走り家に帰るボイス
彼は誰よりも努力をしていた
武術、魔法学、文学、どの授業でもトップだった
それで最下位の鍛冶職人
国を、いや世界を恨んだ
ボイスが飛び出した学校では
皆がボイスを笑い者にしていた
「いくらトップでも貧乏人にはチャンスなんてねぇよな」
薄っぺらい勇者や魔法使いの卵が笑っていた
女で一つで育ててくれたボイスの家は確かに貧乏だった
卒業証書を強く握りしめたボイスの手は赤く染まっていた
ドアをそっと開けるボイス
「た、ただいま…」
いつもの笑顔で包み込む母
「おかえりなさい!卒業おめでとう!」
「なりたい職業にはつけた?」
ぐしゃぐしゃになった卒業証書を母に渡すボイス
「そっか、鍛冶職人か…」
「ボイスはどうするの?」
ボイスが悔しそうに言う
「あんなに頑張ってきたのに何で鍛冶職人なんだよ!」
「誰も俺のことなんか見てないんだ
ずっと夢を追いかけてきた俺の姿なんか」
「兵になってのし上がってやる」
首を強く横に振り母がボイスを抱きしめる
「あなたが産まれてからずっと戦うあなたを私は見てきたわ」
「ボイス!あなたは強い」
「あと…あなたの父親はもっと強かったから…大丈夫」
「今から兵団に申し込みに行きなさい」
強くうなずき悔しさを胸にボイスは兵団の申し込みに向かった
国兵舎前で心を入れ替えるボイス
「すみません兵団の申し込みに来ましたボイス・オートです」
国兵がリストを見て笑いながらボイスに言う
「君は兵にはなれないな、兵禁止リストに書いてある名だからな!農業か漁業に行くしか無いな」
「剣士から兵や鍛冶職人はなれてもな、鍛冶職人から兵や剣士にはなれないからなぁ」
「はっはっはっ」
ボイスの瞳から光が消えた
夢へ一歩近づくはずの1日が
絶望に包まれる1日となってしまった
トボトボ家に向かうボイス
ドアをそっと開け母に言う
「お、俺兵にもなれなかったよ、母さん、
明日からみんなのために武器を作るよ、
俺鍛冶職人なる…」
母がボイスの手を握り確信する
「それがあなたの1番の強さねボイス」
深くうなずきながら答えるボイス
「うん」
もうボイスの瞳から涙が溢れる事は無かった
次の日の朝ボイスは
ナイフを腰に下げ少し大きめのリュックを背負い
山へ向かった
「母さん休みの日は帰ってくるからね!」
涙を堪えてボイスを笑顔で見送る母
ボイス少年の夢はここから始まるのであった