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第七話 坂のスペシャリスト

「ふぁ~あ」


 お昼ごはん前、いつものようにぼーっと王座に座っていると大きなあくびが出た。


「平和だな~」


「いいことね」


 呪いにかかってからむしろ平和になった。昔はよく人間どもが襲いかかってきたからな。


「ご飯よ~」


「んむ」


 エーレお手製の料理が俺の前に並ぶ。


「モグモグゴックン」


 ご飯を食べ終え一服。


「ふぁ~ぉあぁ~あ」


 先程より強烈な眠気が俺を襲う。この時間って非常に眠くなるよね!


「昼寝するわ~」


「わかった。私は買い物行ってくる」


 食器を片付けベッド王座に取り替えた後、エーレは城から出ていった。さて、俺も寝るか。


「むにむに。ベルト型毛布っと……。いいかめんどくさい」


「おやすみぃ」


 そのまま眠りについた。


「パチッ」


 しばらくして目が開く。


「んー、まだ眠い。もう少し」


 またすぐに眠る。


「ん、イテテ」


 体に痛みが。ものすごい寝相になっていた。


「体勢を戻さないと」


「カチッ」


 もぞもぞ動いている間に何かに触った。


「ガタガタガタ」


「なんだ? 地震か?」


 大きな揺れを感じた。だがそれは一瞬だった。


「何もないか。んじゃもう一眠り」


 寝なおそうとしたがそこで違和感に気づく。


「スー」


「ドクン!」


 胸のあたりで数字が減ったときの「鼓動」を感じた。


「あれ?」


「ゲー! す、進んでる!!」


 王座が城の入口に向かって進んでいた。


「そ、そうか。さっき取替ボタンを押してしまって王座が基礎から外れちゃったのか」


 んで、少し進んで王座の場所から階段のところへ。そう、王座の場所ってちょっと高くなってるんだよね。でそこから落ちていったわけだ。階段から滑り落ちたときに起こった振動で、数字が減るときの鼓動音に気づかなかったのは悲劇だな。んでスピードが出てここまで来ちまったと。


「いや、冷静に分析してる場合か! なんとかしないと」


「グイッ」


「あれ」


 動こうとしたところで衣服が王座の裏側のどこかに引っかかっている事がわかった。


「うわ! こんな時に服が引っかかりやがった」


 取り外しに少し時間がかかってしまった。


「くそ、飛び降りるか」


 飛び降りようとしたところで王座が止まった。


「よ、よかった」


 そして止まった場所は。


「お城を少し出たところまで来ちゃったけど……」


 予想外の出来事に茫然自失となる俺。


「ペランちゃん、なんで外に!?」


 しばらくしてエーレが帰ってきた。

 ハハハ。エーレ、俺、やっちゃったよ。


「寝ぼけてボタンを押しちゃって。気がついたらここまで」


「ベルト毛布があるからボタンを押せないはずよ。もしや」


「ご明察。面倒でつけませんでした!」


「おバカ……」


「それで数字は」


「あ! 今いくつ!?」


「66。ガッツリ減ったわね……」


「ヌアァァーー」


「とりあえず業者さんを」


 2時間後、いつもの業者さんが。


「お話は聞きました」


「へ、へへへ。やっちまいまして」


 業者さんは地面を手の甲で叩いた。


「地面はしっかりしてるな」


「それから固定部も移動できるようにしましょうか」


「それでお願いします」


「えーっと、屋根がほしいところですね」


 皆で上を見る。今日は雲ひとつない天気、見事な快晴だ!


「雨風はしのぎたいところです」


「王座を囲うように壁と屋根を。屋根はすぐ適当なものを用意しますが、壁の方は少し時間をいただきます」


「はい」


「はー、66かぁ」


 俺は手鏡で頭上の数字を眺めていた。


「話し合いましょうって、心ここにあらずね、ペランちゃん」


「そりゃそーさー」


 あー、そうだ。


「王冠が欲しいんだけど作ってもらえるかな」


「王冠ですか」


「うん、この数字を隠したくてね」


「なるほど。いつも出っぱなしですからね」


「そそ」


「では失礼して」


 俺の頭の寸法を取る業者さん。


「少々高さがある王冠となりますがよろしいですか」


「いいよ。隠せるならなんでも。あ、安めにお願いね」


「はい」


「ではこのくらいで。我々は帰ります」


「どーもー」


 業者さん達は帰っていった。


「はー、まったく。命に関わることなんだからしっかりしてよね」


「すみません。ベルト式毛布はこれから必ず着用します」


「よし」


「にしても驚いたわ。城の前、青空の下に王座が出てたから」


「あぁ」


「ところで体になにか違和感とかある?」


「特にないな」


「それなら数字による劣化というか、徐々に弱るとかそういうのはないかもね」


「ふむ」


「起きてしまったことは仕方ないわ。切り替えていきましょう」


「そうだ、な」

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