第五話 お高そうな骸骨
「パチャ、シュッシュ」
「ふぅー、いいお湯だった。エーレ、ベッド王座に取り替えてくれ」
「はいはい」
『おーい、誰かいるかー』
城の入口の方から声が聞こえる。夕食後、オフロに入って、さあこれから寝ようって時に客か。めんどくせえ!
「はい、どうぞ」
「ん?」
「ガシャンガシャン」
骸骨が俺の前に。
あー、誰かと思えば!
「ロンさん! クリスタルスケルトンのロンさんじゃないか!」
「あ、お久しぶりです」
『久しぶりだな、ペラン坊にエーレ』
「今までどこに行ってたんですか!」
『ハハハ、ドラゴンの宝物庫に入り込んでしまってな。なかなか抜け出せなんだ』
クリスタルスケルトンのロンさん。この人は親父の部下で、見た目が非常にゴージャスな骸骨。黙っていると「クリスタル製の高価そうな骸骨」にしか見えない人だ。さらに彼は弱い。魔族でNo.2の弱さと噂されている。ちなみにNo.1は俺だ。
『ところで外に魔物がいないし、皆いないしで一体どうなっているんだ?』
「ああ、親父が死んでね」
『なんと、そうだったのか……』
俺はロンさんにここまでの経緯を説明した。
『そうか、大変だったな、ペラン坊』
『いや、もう魔王ペランと呼ぶべきか』
「ロンさんには、ペラン坊って呼んでもらいたいな」
『ははは、わかった』
(いつもわがままなペランちゃんもロンさんには敵わないわね)
(うっさい)
数少ない、俺が心をひらいている魔族の1人。
「今日はもう遅い、泊まっていって。あ、寝る場所の準備ができていないか」
「今から準備してくるよ」
「いや、そこまでせんでいい。そのへんの壁に寄りかかって寝るさ」
「そういうわけには」
「俺はペラン坊の部下だからな。魔王を守るは俺の仕事よ」
「!!」
「そうか、それならお願いするよ」
これだ。会うとき会うとき、いつもかっこいいことを言う。このスケルトンめ! アンタも弱いくせに! 俺を泣かせようってか!
そう、弱いけどカッコイイ。俺が心をひらいている理由がこれだ。
「寝るけどな! ハッハッハ!」
「ハッハッハ!」
つられて笑う。今日は久しぶりに何者にも怯えず眠ることができそうだ。
深夜。
「お頭、ここですね」
(馬鹿、デカイ声出すんじゃねえ)
(あ、すんません)
(ひーふー、6人。皆ついてきたな)
(はーい)
(しっかし不気味なところですね。魔物はいなかったし、門兵もいないしで。普通城を守らせるんじゃないんすかね)
(単純に誰もいないって可能性もあるだろ)
(まあそっすね)
(お頭、王座があるんですけど、誰かがそこで眠っているようなんですよね)
(なんだと)
「ピプー、ピプー」
(ホントだ、ますます不気味だなぁ)
(!?)
(どうした?)
(お頭あれを!)
(おお! なんとも高価そうな)
(クリスタルで出来た骸骨か。こいつはすごい)
(よしお前ら、コイツを盗んで帰るぞ)
(他は盗まねぇんで?)
(これ以上奥にいくと王座にいるアイツを起こしちまいそうだしな。それにコイツだけで充分よ)
(確かに)
(ぬお、コイツは重い)
(皆で協力して運べ)
(うわっと!)
「カラン」
(バ、バカ!)
(……)
(大丈夫なようですね)
(慎重に運べ)
(はーい)
朝。エーレが作ってきた朝食の匂いで目が覚めた。
「ペランちゃん、ご飯よ」
「むにゃおう」
「あれ、ロンさんは?」
「ふぉえ?」
あれ? どこにもいない。ああ、そうだった。
「いつものだな」
「別名、神出鬼没のロン。相変わらずね」
ロンさんには大きな弱点がある。それは神出鬼没すぎるところ。理由はわからないけど毎度こうだ。今回も会った翌日に消えるとか、はやすぎでしょ。
「まあ、今は安全だし、安心して去ったんじゃない?」
「フン、弱いし居ても対して変わらんさ!」
「ふふ、そうね」
「エーレ、スープをくれ!」
「はいはい」
つっぱねてみたけど本当は寂しい。「俺もまだまだ子供だな」とくすりと笑い、熱いスープをハフハフ言いながら飲んだ。




