表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/24

第二話 飛び上がり自殺

「いいね、それでいこう」


「では早速、とうっ!」


 エーレが飛び上がる。城の屋根を突き破りその上へ。


「ペランちゃん、飛べる? もしくは魔法で来れそう?」


「うーん」


 体の中から凄まじい力が湧き上がるのを感じる。しかし強力すぎる可能性を考え飛び上がったり魔法で飛んだりするのはやめることにした。飛び上がって天井にぶつかって打ち所が悪く死ぬ可能性もある。そもそも防御力が上がってるかどうかわからないし。


「力を使うのはやめとく」


 後世のヤツラに「飛び上がり自殺のペラン」とか言われたくないしな、ここは慎重に。


「じゃあロープで引き上げるね」


 俺をロープで縛り、引っ張り上げた。


「到着」


「さて、お待ちかねの魔法タイムだ」


「見せてやるぜ! 魔王となった俺の魔法をな!」


 手のひらを近くの山脈に向ける。


「ファイヤーボール!」


「ズオォーーン!」


「グシャーーン!」


 となる予定だった。


「ポロン」


「ジュ」


 小さな炎の玉が勢いなく下へ。そしてすぐ炎が消える。


「……」


「変わってねーじゃねえか! 呪いがついただけか!!」


「ちょ、ちょっと。暴れないで。足場が悪いんだから」


「ちくしょーー!」


「ガタン」


「あ」


 板を踏み外し直滑降。


「いけない!」


 エーレが飛び降りてくる。


「ペーラーン、どうだ。魔王になったか、って落ちてるー!」


「ズドドド」


 おや? あのおっきなおっぱいはお隣の魔王候補のトラマじゃないか。彼女とも幼馴染、昔から仲が良かった。


「まにあえー!」


 それにしても必死のダッシュ。そうだよな、下手すると死ぬし。

 そうだ、トラマ。はやくしないとお前の幼馴染が! あ、このセリフ、なんか魔王っぽい。


「うおりゃ!」


「バシン」


 トラマがうまいこと俺をキャッチ。


「ナイスキャッチ、トラマ」


「言っとる場合か。な~にが起きたの」


「かくかくしかじか」


「はー、そんなことが。まあ、あんたらしいけど」


「納得しちゃうの!?」


「ありがとう、トラマ」


「まったく、エーレがついていながら」


「ゴメン」


「しっかし厄介なことになったな」


「まあ――」


 気が少し落ち着いてきたからだろう。

 尿意が。


「あ、エーレさん」


「なに?」


「おしっこ」


 ツボっぽいものを用意してくれた。そこへシュバッと。


「あ」


「今度は?」


「デカイほう」


「……これは大変だな」


 小一時間ほど3人でお話を。


「今日は帰るよ。また来る」


「それから解呪に関しては調べてみよう」


「後、魔皇様に私から話を入れとく。2人共しばらくそこを動けないだろう?」


 魔皇。魔族の中で一番偉い人。もちろん魔王よりも。


「おう、頼む。もちろん秘密裏でな。他の奴等に知られたら何を言われるかわからんからな」


「わかっている」


「助かる、お願いねー」


 トラマは城から出ていった。


「はぁ、ため息しか出ないな」


「状況が悪化したねぇ」


「ポツポツ」


「ザー」


 俺に雨粒が降りかかる。


「すみません、雨降ってきたんでなんとかしてください」


「はいはい」


 2日後。


「王座から動けないわけだし、王座を改良したいところね」


「そうだな。ベッド型王座とか」


「カシャン」


「ん?」


「魔族がいました。成敗しましょう」


「あ、あれは勇者!」


 武装した人間が5人、城に入ってきた。


「うむ」


「しかも奴は魔王殺しのアーサー!」


 魔王殺しのアーサー。殺した魔族は数しれず、狙われたものは確実に死ぬとか。


「私では勝てないわ。もうだめかしら」


「剣を渡せ、エーレ」


「え?」


「はやく」


「は、はい」


(一体何を。もしかして一矢報いるつもり!?)


 剣を逆さに持つ。そして刃を俺に向かって突っ込ませる。


「ストーップ!」


 エーレが止めにはいった。


「何してるの!」


「勝てないだろ! 惨たらしく殺されるより潔く! お前は俺にかまってないではやく逃げろ!」


「そんなこと言ったって!」


「何やってるんだアイツラ?」


「構いません、片付けてしまいましょう」


「いや、まて」


「どうしました、アーサー様」


「おかしいと思わないか? この状況」


「ふーむ」


「そうですね。ここへ来るまでに魔物が一匹もいませんでした。妙な感じはします」


「それにあの魔族、こんな時に剣をもうひとりの魔族に突き立てようとしているし。いや、まてよ」


「そうだ、気がついたか。多分、あの女魔族は今がチャンスとあの魔族を殺そうとしているのだろう」


「いつ殺しにかかっても構わないってやつですか」


「それに見ろ、あの女の表情を。必死だ」


「ふむ」


「男の方も必死に見えますね」


「それだ」


「どういうことですか?」


「誘っているんだ、我々を」


「!?」


「わざわざ殺させようとしているんだ、あの女に苦戦するはずがない」


「そもそもやばければ普通逃げるだろ? それすら感じさせなかった」


「確かに……」


「ヤツからは危険な匂いがする。今回は新人も多い。戦いはやめておこう」


「はい」


「そうしましょうか」


 城から出ていく人間たち。


「あれ?」


「なんか助かったみたいね……」


「しっかし、このままではいつやられるかわからん。対策を立てないとな」


 呪いに勇者に。俺の人生お先真っ暗だ。

今日はもう1話投稿予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ