第一話 魔王誕生?
某所、とあるお城。
「ペラン様、そろそろお時間かと」
「ああ」
俺の名はペラン。これから邪神様を召喚、力をいただき、魔王となるところだ。
「長いことかかりましたね。ようやく苦労が」
俺に話しかけているのは女執事のエーレ。
「言うな、エーレ」
この城には俺と彼女の二人しか居ない。
3年前、世界に8人いる魔王の一人でもある父が他界。一人息子の俺に家督が譲られたが、非常に能力が低く周りの者達は「魔王の器ではない」と愛想を尽かし、皆暇を取りまくった。結果二人だけが残った。魔物すら居なくなった。ちなみに母は俺が子供の頃に死んでいる。
「ペラン様、王座に邪神様を召喚するために必要な邪香を」
王座に邪香を設置。少し後ろに下がり呪文を唱える。
「最悪にして最強の神よ、我が前に現れいでよ」
「シュゴォー」
邪香から大量の煙が。その煙の中に薄っすらとドクロのようなものが浮かんできた。
『ゴフゥーー、我を呼ぶものは誰だ』
俺はそのドクロに跪き、頭を垂れる。
「お初にお目にかかります、私はペランという魔族です。貴方様から力を授かりたく」
『フゥー、よかろう。では我の前に』
「ハッ」
ふふっ、遂に力が手に入る。見ていろよ、今まで馬鹿にしやがった奴らめ。ここから俺のサクセスストーリーが始まるのだ!
『グワアアアアーーーーッ!!』
邪神様が奇声を上げると俺のまわりに黒い霧のようなものが発生した。
『魔捨て魔捨て』
霧が呪文に反応、口から俺の体の中に侵入してきた。
「ンゴゴーー」
なんか気色悪いものだけど魔王になるんだ、少しくらい我慢しなくちゃ。
ほどなくしてすべての霧が俺の体の中に。
「ドクン!」
おお! きたきた!! なんだか力が湧き上がってくる気がする!
これで俺は魔王だ!!
『ん、あれ?』
『あ』
邪神様が脂汗を流している。煙の状態で脂汗って。さすが邪神様。
『……』
沈黙が続く。なんだろう、聞いてみるか。
「どうしました? 邪神様」
『ごめん、呪いがかかっちゃった』
「は?」
『99歩、歩くと死ぬから』
「ええっ!?」
『じゃ、じゃあね。ごめんね、お役に立てなくて!』
「ちょっとぉ!」
「せめて呪いは解除してもらえませんか!」
『無理』
『さらばだ!』
「シュゥー」
煙が邪香に吸い込まれていった。
「おい!」
「邪神の野郎、逃げやがった!」
「落ち着いてください、ペラン様」
「これが落ち着いてられるか!」
「頭の上に99って数字が出てますよ、って動かないほうが」
エーレの話を聞かず王座にある邪香に近づく。
「この中にあいつが!」
「ドクン!」
「な、なんだ!」
「98に減りましたね。邪神様が嘘を付くとは思えないし、実際99歩歩くと死んでしまうのでは」
「ぐ!」
「とにかく落ち着いてください」
「ぐぐぅーー!」
1時間後。
「ハァー」
「落ち着きましたか」
「ああ、大丈夫だ」
「もう1度呼び出すことは出来ないんだっけ」
「はい、魔王の器を持っている者が一生に1度だけ召喚できます」
「ふむ」
「故にただの魔族の私では召喚はできません」
「わかった」
「ああ、それといつもどおりの話し方でいいぞ、エーレ」
「そうね、儀式も終わったし」
エーレとは幼馴染だ。彼女も早くに親御さんを亡くしている。
「とりあえずいろいろ調べてみましょ」
「調べるって何を?」
「その一歩の距離とか、移動した距離の合計が一歩とみなされるかどうかとか」
「なるほど、探ってみるか」
二人であれこれと意見をぶつけ合い調査を行った。結果様々なことがわかった。
「とりあえず今わかったことを書き出すと」
○一歩は約1.5メートル。
○1.5メートルの中なら何歩歩いても大丈夫。
○他人がペランちゃんを1.5メートル動かした場合でもカウントされる(マイナス1)
○上下はカウントされない。
「こんなところね」
「ふむ、96歩になっちまったが」
手鏡でちらりと頭の上に浮かんでいる数字を確認した。
「1.5メートルって巨大魔族の一歩かな? なんにせよそこは有情ね」
「フハホォーーン、これからどうしよう。頭が痛くなってきた」
頭痛が痛い。もうどーにでもなーれ!
「それでも力が手に入ったんじゃない?」
「ん」
「そうだった!」
厄介な呪いはついたが力も手に入ったはずだ。
「よーし!」
俺は手を前に出し魔法を放とうとした。
「まったまった!」
「こんなところで魔法を使ったら最悪お城が吹っ飛んじゃうよ!」
「そうだな」
「かと言って確かめられないってのは」
「うーん」
悩む二人。
「あ」
エーレがなにか思いついたようだ。
「お城の屋根を破壊して外に魔法をぶっ放すってのはどう?」
次回投稿は土曜日、その次は来週の土曜日と基本週1投稿になります。
よろしくおねがいします!