表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/15

ぷんぷんぷん!の第三話

「アンタら二人の夫婦漫才、教室にまで届いてたよ。いっそ芸人でも目指したら?」

 

 いつもの呆れ顔で言ったのはあたしの友人、桐生麻美だ。

 大人っぽいロングをゆるい巻き毛にした、ちょっと皮肉屋の美人。密かにあたしの憧れでもあったりする。

「目指す? 小宮」

 隣に座る小宮に顔を向けて訊くと、小宮は複雑そうな顔をしてうつむいた。

 

「ちょっと考えさせてください……」

 

 そんなに真剣に悩まなくても……。あたしは小宮となら何でもオッケーだけどね!

 

 ここは学校近くの繁華街のはしっこにある喫茶店。

 アンティークな雰囲気の店内にはネコの写真が所狭しと飾ってあって、なんだか変わってる。名前も『猫屋敷』だって。たまにイケメンの店員さんがいるのがポイント高し。今日もいてくれてラッキー♪

 いつもはマックなんだけど、今日はせっかくテストも終わったことだし、ダイフンパツしよう! ってことで、紅茶が美味しいって評判のこの店に来てくつろいでるあたし達三人。

 店の隅っこには、沢山の写真を前に怪しいオーラを立ち昇らせている黒髪の女の人がいるけど、まぁあんまり見ないようにすればヨシ。

 

「だってさ、麻美。小宮ってば、あたしを超無視してイツキ誘うのに夢中なんだよ。いくらなんでも余裕かましすぎだと思わない?」

「釣った魚にエサはいらないってヤツだよね、あるある」

「えっ!? 全然、そんなこと思ってないよ! あの時はホントに比奈さんに気付かなかったから……」

「むかーっ! まだ言うかこのクチわっ! 罰として明日までに『比奈さん超愛してる。比奈さんが一番大事』って一万回ノートに書いてこいっ!」

「え……『超』って僕が……一万回も?」

「なんか文句ある?」

「い、いいえありませんっ!」

 慌てて頭を振り、ピシッと姿勢を正す小宮。

 くっそーっ! なんだかあたしがワガママオンナみたいじゃん! これも天然効果か!? 天然効果なのかっ!?

 

「しっかし小宮もよーやるねー。あのイツキがお茶なんかに誘って、くるわけないっしょ」

 そんなぴりぴりムードの中、アイスティーをストローでかき混ぜつつ、斜め目線で麻美が言った。

 あたしに頬をつねられながら、小宮はきょとんと反応した。

「え? お茶に誘うのはダメだったかな?」

「男同士で、しかも嫌ってる相手から誘われて、行くわけないっしょ。イツキ攻略するんなら、まずイツキの好きなものから攻めるのが普通じゃない?」

「イツキ君の……好きなものって?」

「例えば、あいつ、ボクシングやってたよね? 小宮もボクシングやって、ちょっと教えて欲しいとかさ」

「あ、なるほど。そっか。確かに、自分の得意分野なら話に乗りやすいから、いけるかも!」

 麻美のアドバイスに、嬉しそうに目を輝かせる小宮。うーん。でもそれは。

 

「あー……あたし、その場合の結末が想像つくんだけど」

 あたしはぴょこんと手をあげてツッコんだ。

「ごめん比奈。実はあたしも言いながら想像ついた」

 麻美が微妙な顔でかきまわしてたストローを止める。

「え? え?」

 あたしと麻美の顔を交互に見やるドンくさい小宮に、あたしと麻美は同時に答えを教えてあげる。

 

『小宮がボコボコにされて終わり』

 

 ハッ、とようやく気付いた顔になって固まる小宮。

 はぁ〜……。

 

「あたし、最後のイツキのセリフまで想像つくよ。『これに懲りたらもう二度と俺に近付くんじゃねーぞ、ひょろメガネッ!』」

「ぶっ。た、確かに言いそうだわ、あの男なら。……小宮、命がけでトライしてみる?」

「……ちょっと考えさせてください……」

 また複雑そうな顔で小宮がうつむき、会話が止まった。

 あはは。なんか空気が重たくなってきた?

 

「グリコっ! またお前はこんな写真を……っ! いい加減訴えるぞ!」

「みぎゃっ、朽木さんっ! な、なんでここがっ」

 

 隅っこの席では、怪しい女の人のところに、めちゃくちゃカッコイイ黒髪の男の人がきて、なんだかもめてる様子。

 

「拝島から、『引き取りにきて欲しい』って通報があったんだ!」

「拝島さんの裏切りものぉぉぉ!」

「ごめんよ栗子ちゃん。うちもサービス業だからさ……」

 

 あ、あの人、イケメン店員さんの知り合いだったんだ。

 カッコイイ黒髪の人に引き摺られるようにして、店の外に連れ出される女の人。

 遠吠えのような声がしばらく響き、やがてプッツリと途絶えた後、店内はしばし妙な静けさに包まれた。

 

「……えーっと」

 

 気をとりなおして、軌道修正すべく、まず口を開いたのはあたしだ。

 

「んじゃさ、今夜、イツキ達とクラブで遊ぶ約束してるから、試しに行ってみる? 小宮」

「え? 今夜?」

「うん、小宮の知らないヒトがいっぱい来るから、居辛いかなーと思って、今まで誘わなかったんだけどさ。小宮がよければみんなに紹介するし、イツキと交流できるかもよ?」

 途端、小宮の顔が明るさを取り戻した。

「比奈さんのクラブの仲間……う、うん、紹介して欲しいよ!」

 パッと顔を輝かせる純粋少年。

 身を乗り出すほどに嬉しいらしく。

「比奈さんの大事な友達は、僕にとっても大切な人達だから。ずっと前から会ってみたいって思ってたんだ。是非お願いしてもいい? 比奈さん」

 きらきらした目が真っ直ぐあたしを覗き込んでくる。

 ぐっ。ピュアビームが眩しい! 眩しすぎて目に痛い〜〜〜っ!

 思わず引け腰。

 

「うっわー……サブイボできた。真顔で言うかそれを。あんた、よー耐えられるね比奈……」

 

 本当に寒そうな顔でポソリと麻美が言う。

 

 ふふ……。この寒さが段々とクセになってくるのだよ……我が心友よ。

 

 

 

すみません、知ってる方は教えてください。

未成年のフィルタリング規制についてなんですが。

現在、卯月は自分のiらんどのHPからこの「小説家になろう!」の作品の携帯用ページへリンクを貼って、携帯使用者の方に辿りやすいようにしています。

しかし、フィルタリング規制により、未成年の携帯使用者の方は、「なろう!」自体にアクセスできなくなった可能性があります。

現在、フィルタリング規制されて、この作品を見れなくなった方をご存知ですか?

もし、「見れない」という方がいらっしゃったら、iらんどに携帯使用者用の作品ページを作成しようと思っていますので、すみませんが、分かる方がいらっしゃいましたら教えてください。m(_ _)m

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ