第18話 後悔
達夫はベッドの上で目を覚ました。横ではリアが眠っている。達夫は混乱したが自分に起った事を思い出しハッとして起き上がった。ベッドが軋み、リアもちょうど目を覚ました。
「良子はどうなったんだ???」
「おはようございます。目が覚めましたか。よかったです。やけども全部綺麗に治って。」
「良子は?」
「・・・・・・亡くなりました。」
「なんて....」 達夫は身震いをしながら泣いた。その達夫をリアが優しく抱擁する。
「俺は.....俺は助けられなかった..良子を.....」 リアの服には達夫の涙がしみ込んでいく。
「わかります。私もですから.....」
しばらく二人はそのままだったが、リアがまずは着替えて食事にしましょうと提案し、達夫の部屋から持ってきた達夫の服を達夫に着せてリビングまで連れてきた。
リアはとりあえずトーストとコーヒーを用意したが、達夫は放心状態で椅子に座ったまま食事には手を付けず黙っていた。リアは達夫の隣に座り、黙って達夫の手を握り続けていた。しばらく沈黙が続いたあと、達夫が口を開いた。
「君が助けてくれたのか?俺はあそこで死ぬべきだったんじゃないだろうか。」
「そんなことはありません。あなたには死相が出ていなかったのですから、死ぬべきではなかったはずです。」
「また『運命』ってやつか。だけど俺が良子を殺したんだ。生きていていいはずがない。」
「殺した?」
「ああ。良子は飲みすぎて眠いと言って先に寝室に向かって、俺は眠れなくて、でもワインをのんでいたらいつの間にか眠ってしまって、起きたら部屋中に火が回っていて.....寝ている間に何かの拍子で蝋燭が倒れて火が回ったに違いない。燃えやすいクリスマス用の飾りもあったし、それも原因だろう。燃え方が偏っていたし.....もしあの時眠っていなければ、いや良子と一緒に寝室にいってさえすれば何も起こらなかったはずだ。」
「達夫さん、私は思うんです、たとえ昨日の夜、達夫さんが火事を回避して良子さんを助けられたとしても、その後何かの災厄で良子さんが亡くなっていたんではないかと。『運命』、『宿命』とはそう言うものです。だから自分を責めないでください。それに私も良子さんを救う選択肢はあったんです。でも良子さんを助けたら間違いなく貴方は死んでいた。だから私は貴方だけを助けたんです。だから、私も良子さんを殺したと言われれば殺したことになります。」
「でも良子が死んで生きているのがつらいんだ....」
リアは立ち上がってキッチンに行き、フリーゲンピルツから抽出した抽出物と薬草を混ぜた粉末をホットミルクに混ぜて、達夫に渡した。
「これを飲めば気分が楽になります。食欲はないかもしれませんがのんでください。」
達夫は勧められるがままに、ホットミルクを飲んだ。リアの言う通りストレスで緊張状態にあった体が楽になるように感じられた。
「後は元気になる御まじないです。」
そう言うとリアは達夫にキスをして、自分の生命エネエルギーを達夫に注いだ。すると不思議なことにうつ状態にあった達夫に気力が戻ってきた。
「不思議だ...」
「元気になりましたか?それでは大おば様にこれからの対処法をきいてみましょう。もしかしたら、良子さんを生き返らせる方法があるかもしれませんし。」
そう言うとリアはザビーネに電話をかけてしばらく話していた。そしてその後、電話をきって達夫の方へ顔を向け笑顔をみせた。
励みになるので、感想、ブックマーク、レヴューお願いします。