自然な会話って何だよ……
今回の議題は再び会話です。
前回の講座では「思った通りに書けば良い」とは言いましたが、「思った通りに書け」と言われて書ければ、そもそも苦労なんてしません。ここではもう少し踏み込んで、小説内でも会話について考えてみることにしましょう。
さて、小説で自然な会話を書く上で大切なことはなにか。
代名詞を使いすぎない、会話がキャッチボールであることを意識するなど、幾つかあるとはおもいますが、一番注意すべきなのは「発言者が誰であるか」を読者に対して示唆する必要があるという点でしょう。
普段の会話やドラマやアニメでは「発言者」というのは明確ですし、ラジオなどでも声から判断がつくと思います。
しかし、それらのメディアと同じようにキャラクターの台詞を書いてしまうと、小説の場合はすぐに発言者が分からなくなってしまいます。
試しに、ドラマの台本などのキャラクター名を隠して読んでみてください。おそらく、すぐに「誰が発言しているのか」が分からなくなってしまうでしょう。
このように、自然な会話を作り上げるためには、小説の場合には通常の会話文に加えて「発言者が誰かを明確にする」という工夫が必要になってきます。
では、どのような工夫をすれば読者に対して「発言者」が伝わりやすい小説になるのか。
1・地の文でキャラクター名を補強する
セリフの前後にキャラクターの仕草などを付け加えることで、発言者を明確にするという一番スタンダードな手法です。この手法はキャラクターの心情描写もできて一石二鳥な方法でもあります。
しかしながら、抑揚のない日常シーンで会話する場合には少し使いにくく、また、あまり使いすぎると文章全体にくどい印象を与えてしまいます。
2・互いに名前を呼ばせる
「〇〇はどう思う?」などと、台詞中に会話している相手の名前を入れる手法です。
日常シーンで使ってもあまり不自然になりにくく、また地の文を入れないので会話のリズムを阻害しません。
台詞に名前を入れるため、名前を隠しておきたいキャラクターが居る場合には当然使えませんし、発言者が未知のキャラクターの名前を呼ぶことができないことに注意が必要です。
3・口癖を付与する
キャラクターの語尾を必ず「~だぜ」とする。話し方そのものに特徴を付けて「肯定、その意見には同意する」など、必ず最初の一言が熟語として、後ろに通常の会話文をくっつけるなどがあります。
この方法はキャラクターを読者に覚えてもらいやすいですし、口癖を予め決めておけば作者自身も描写の負担を減らす事ができます。
ただ、あまりこれに頼り過ぎると「キャラクターが棒立ちのまま会話している」なんて状態になりかねないので、適度に描写を入れることを忘れないでください。
これらを上手く使い分け、時折混ぜ込んで使いながらキャラクター達に会話をさせることで自然な会話というのができるようになると思います。
では、また次回。




