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プロローグ・前編

 田中 まさき 25歳 独身 東京在住の一人暮らし。


 職業は中堅商社の営業サラリーマン。結婚願望なし。趣味はゲームとラノベ。


 そこそこの大学を出て、そこそこの会社に就職し、社会人3年目になった。


 身長は165cmくらいと小柄。童顔で体の線が細い。


 年齢よりもだいぶ幼く見えてしまうのは、小柄な体系に加え、自己評価が低く自信と覇気がないからだろうか。


 加えて彼女がいない。同僚からはよく草食系男児と揶揄された。


 なぜここまでつらつらとプロフィールを述べたのかといえば、何の前触れもなく人生を振り返る機会が訪れたからだった。



――報道――



 今日未明、普通乗用車が横断歩道を横断中の歩行者をはねる事故があり、25歳の男性が搬送先の病院で死亡しました。


 警察によりますと、昨日午後11時ごろ、国道〇号線で〇〇方面から〇〇方面向けに走行していた普通乗用車が横断歩道を横断中の歩行者をはねたとのことです。


 この事故で、会社員の『田中 まさき』さん(25)が意識不明の重体で病院に搬送され、およそ1時間後に死亡が確認されました。


 現場は見通しがよく信号機が設置されていたとのことです。警察は、普通乗用車を運転していた男性から話を聞くなどし、詳しい事故の原因を調べています。



 自分に身に起こった報道がまるで他人事のようだ。


 あーあ。せっかく仕事帰りにコンビニで課金したのに。明日は土曜だから、仕事上がりでどんなに疲れていようが、徹夜でネトゲをする予定だったのに。凝りに凝った装備と最強になったキャラで羨望の眼差しを受けるはずだったのに。そういえば、昨日届いていたラノベ新刊も読んでいなかったっけ……。


 今思えば本当に何の前触れもなかった。黒猫を見るとか、靴紐が切れるとか、お椀にひびが入るとかあるはずも無い。一瞬だった。人はこうも簡単に死ねるんだと痛感した。


 そして思う。


 人生を振り返る機会が訪れたと前置きしておきながら、昨日今日のことしか思い起こせないのはなぜなのだろうと。


「で、どうするね?」


 声を掛けてきたのは、さきほどから目の前にいる老躯である。


「もう少し感傷に浸らせて下さい。僕の人生なわけですから」


 さきほどから黙考している僕は、心の中で自分に問いかけていた。


 自分の人生に価値はあったのかと。


 未練や後悔は無かったかと。


「しかし、わしもお主の生き様は知っておるが……。感傷に浸ると言われてものぅ。基本的にお主はゲームをするかラノベを読むしかしとらんじゃろ」


「……」


 反論の余地なく黙り込むしかなかった。


 本当は気づいていた。


 突如幕を下ろしてしまった惰性しかない人生に未練たらたらで、後悔ばかりであると。


「そろそろ決めてくれんかね? これでも、わしは忙しい身なのじゃ」


 しかし、どこまでも他人事で、人の人生をなんとも思っていないような口調にカチンとくる。目の前の老躯に反抗心が沸いてきた。


「そもそも、あなたは誰で、ここはどこですか?」


「わしか? わしは人間界における神じゃ。ここは、この世とあの世の狭間といったところじゃの」


「……ふっ」


 突拍子が無さ過ぎて、つい鼻で笑ってしまった。


「あっ! 貴様! 信じとらんな!? さっきも説明したが、わしは正真正銘の神じゃ!!」


 とりあえず神云々は無視して、話題を変えることにした。


「それでさっきのお話の続きですが、転生にあたって能力をプレゼントしてくれるとか、くれないとか」


「うむ。まず、お主に転生の意思があるかどうかを問いたい」


「このままだとあの世行きですもんね。そりゃあ転生できるなら是非ともお願いしたいですよ」


 一寸の迷いもなく転生の意思があると肯定した。


 惰性しかなかった人生をやり直してみたい。


 やり直せるなら後悔したくない。


 振り返った時に、思い出すことができる思い出が欲しい。


「ならば能力を与えてやろう」


 自称神を名乗る老躯は厳かにそう言うと、右手を宙にかざした。


 はじめまして。作者の三好 幸人と申します。


 序章 エピローグ・前編をお読み頂きありがとうございます。

 本作は作者の処女作にございます。表に出るのが苦手な作者は、今後『前書き』『後書き』を基本的に書かないかと思いますが、はじめましてのご挨拶はここに綴らせて頂きたいと思います。


 楽しくをモットーに、最後の最後まで物語を書いてまいります。拙い文章ではございますが、どうぞよろしくお願いいたします。

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