第一曲 人生を変える日
『やべぇ…バンドやろうぜ!バンド!』
思い出した。この一言で俺の人生が一気に変わったんだ。
―高1の秋―
『ミヤ、今日暇?ミヤん家で遊ぶべ!』
『いいよ♪』
今日家に遊びに来るのはタカだ。
― タカ ―
タカは筋トレが趣味で毎日鍛えてる。
優しい顔して性格もナイス。タカにあまり彼女ができないことに俺はずっと疑問を抱いていた。
家は高校から1Kmもない。こんな近さから、いつしか家は暇人の溜まり場となっていた。
確かに家は3階建ての家で、1階は卓球台やパチスロ台があり、3階の俺の部屋ではゲームがあって昼寝もできる。
家の前でもバスケ、サッカー、野球などもできるから友達も家で遊ぶのが好きみたいだ。
もちろん俺もこの家は好きだ。でも…。
『あ!これギタドラじゃね!やりたい!』
タカが目を輝かせていう。
ギタドラはPS2の音ゲー。ドラムとギターでセッション(演奏)する結構楽しいゲームだ。
そしてこのゲームには専用コントローラがあり、それを本体に繋げると更にリアルに楽しめる。
俺も昔はこのゲームは結構得意だった…。
『ミヤ、ドラム叩けんの??』
『当たり前じゃん!』
自信満々に言ってみた。そしたら…
『じゃあ俺ギターやるからドラムやって!』
タカはそう言って、俺にドラムをやるように言った。
(やば…これ中学以来やったことねぇよ。
でも今さら嘘だよなんて言えないし。)
曲が始まると同時に少しずつ感を取り戻し初めた。
レベルの低い曲を選んだのが正解だった。
そんなにミスらずに済んだからだ。
『すげぇ!本当に叩けてんじゃん!すげぇなミヤ!』
『あはは…あんがと。』
なんとか恥を欠かずに済んだ。
この後もずっとギタドラを二人で盛り上って楽しんだ。
タカは電車の時間が近づいてきたから帰る支度を始めると、
『ミヤはドラム叩けたんだなぁ♪これはヨッシーに知らせなきゃ。』
『何で!別に知らせなくていいよ!俺アイツとあまり仲良くないし。』
― ヨッシー ―
タカと仲が良くていつも一緒にいる。
ヨッシーを初めて見た時の第一印象は悪かったから仲良くなる気はあまりなかった。
『ヨッシーは確かに感じ悪いけどいい奴だよ!じゃあまた明日学校でね!バイバイ!』
タカが俺に手を振る。
『うん。また明日!バイバイ!』
と言って俺も手を振る。
次の日
教室のドアを開けると数人の友達が一つに固まって会話をしていた。
タカもその中にいた。
『あ!ミヤ!聞いたよ!ドラム叩けるんだって?』
大声で俺の元へ来たのはヨッシーとバンだ。
― バン ―
クラス1のイケメン。あまり学校に来ないけど変態で面白いやつだ。ちなみにバンもタカ同様、家の常連客である。
(さっそくか…てかタカのやつバンにも話したのか。)
まっいっか…隠してたわけでもないし。
『簡単なやつだけしかできないんだけどね。』
俺がそう言うと
『へぇー。以外だなぁ。俺もベースできるんだけど俺達バンド組むか!?』
『…え!?バンド?』
『いーじゃん!じゃあ俺がヴォーカルやる!』
ヨッシーがヴォーカル…。俺にとっては少し複雑な気持ちだ。
『バンド組むと楽しいぜぇ!』
(バンの野郎…余計な事を。)
軽くバンを睨んだ。
別に組んでもいいけど、本当に俺でいいのか…?
ゲームでは確かに叩けたけど、本物は叩いたことがない。
できなかったら……。
『ごめん、少し考えさせて』
そう言うとバン達は
『分かった。なるべく早く答え聞かせてね!』
『うん。』
その日から俺はずっと悩んでいた。バンドを組みたくないと言えば嘘になるけど、実際本物のドラムを前にして叩けなかった場合、きっと俺をバンドから外すだろう。それは別に構わない。
でもその後、友達として仲良くなれるのか凄く不安だった。
仲間外れとかするのもされるのも嫌いだからとても恐かった。
そのまま答えが出せずに何ヵ月も過ぎた。
いい加減バン達に答えを聞かせないと…。
バンやヨッシーもこのままこの話を自然消滅されたら腹が立つだろう。
というより、あの二人は本気でバンドを組む気なのか。
これだけ待たされても平気な二人を見ると正直疑ってしまう。
このまま忘れてくれるのを待とうか。そんな事を考えたこともあった。
でも、それじゃ自分自身納得がいかない。
答えを出そう。
俺にとって人生を変えた日がやってきた。




