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ナルディアとミヒャエルのパンドラの箱を引っくり返す(ような)会話

「こんにちは?今日はいかがお過ごし?」

「ふん、生きる事に意味などない、所詮は人間だ、ただそこに在るだけだ」

「まあそうですわね、所詮は物質。機械のように歯車で動いてるのを凄く複雑にしただけですものね」

「そうだ、こうやって喋る事も全てだ。ただの現象だ、人間の生に意味などないのだ」

「でもわたくし、貴方と話すことが心地よいと、そう思ってしまうの?それはなぜかしら」

「それも当然だ。そのように脳の構造が出来上がっているのだ、全て意味が無いと、先言ったはずだが」

「そうでありましたわね。ええ、全く持って明瞭に理解できますわ、貴方は私と話していて楽しいのですか?」

「なにも感じぬ、私は全ての事象に対してなんら感情をうごかさない、そういう風にできているのだ」

「そう、思い込んでいるの間違いでは?」

「そうだったとて変わらない、所詮は人間だ、どう何を考えたところで行き着くところは一つ、死のみだ」

「無という、そういう状態ですか、でもそれは果たして真であるかしら?」

「それもまた人間風情には関係の無いこと、無でも、はたまたそうでない物であるにしろ、人間では到達も理解も出来ぬよ」

「ふむ、そうですか。私はもしかしたら、無以上の、有以上の。それら究極の二元論以上の何かが、この世界には存在すると思いたいのですが」

「それもまた自由だ、どう考えてもそれはそれで人間の考えること。現実が変わるわけでもあるまい」

「貴方は本当に答えを悟りきっているの?わたしと同じで現実に僅かでも希望を見出しているから生きているのではなくて?」

「それも当然であろう?人間は希望を棄てられぬ、絶望もまたしかり。どんな状況でも精神が殺されない限りは、希望も絶望も最小の単位で認識できる生き物よ」

「ならば、貴方は悟りきっていないのでは?悟りきるとはどういう意味なのでしょうか?」

「人類全てを、自分と同位の全てを消滅させたいという、そういう意志だ」

「??それは一体どういう意味でしょうか?わたしは自分と同位の全てを無限の単位で存在させたい。その人口無限大化によるスケールメリットによる、科学の加速に希望を見出しているのですけれども」

「それもまた一つの、私と対極の答えだな。私は全てを消滅させることにより、真の答えに辿り着けると信じるものだ」

「まったく、理解不明ですわ、どういう思考経路でそうなりましたの?」

「わかっているはずだ。絶望と希望、どちらの総量が勝り、心の天秤が傾いているほう、そういえば理解できるかね」

「ええ、そうですわ、お察しの通り、わかっておりましたわ。ええ私は希望の方に天秤が傾いております」

「そなたは他人の存在で希望の総量が増すのであろう?他人を自分自身と同位の存在と認識するしか、我々のような存在はできぬからな」

「そうですか、貴方は他人のうちに絶望のほうを、より深く感じてしまう。だから全人類を消滅させたいと?」

「さようだ、目障りに過ぎる。全て消えてなくなれば、我一人に没入できる、無限の愛を自己愛にのみ注ぎ込むことが出来る、しかし他人が存在する以上は、この全宇宙に一人でも人間がいれば、それはできない、そういう事だ」

「その考えも、確かに魅力的ではあります。しかしそんな空虚な空間、私は退屈に過ぎると思いますが」

「それはそなたの感性だ。希望により全てに夢を見ることができる、そなたならではだ」

「ええ、私はこの感性を誇りに思いますわ。貴方は全てを悪夢に、不快なものに感じられてしまうわけですね」

「そうだ、だが。それで死を望むわけではない、死が救いになる、そんな不確定の運命に、己の全てを委ねるほど、そなたも我も愚か者でない、心が消滅するまで生き続けたいと願わずにはいられないのだ」

「ふふ。やはりそこまで悟られているなら、貴方の今持つ全ての英知と合わせて。貴方がその段階まで至ってしまったのも頷けますね」

「そなたの方こそ、対極ではあるが。同じ階層に至っていることはわかっているのか?」」

「もちろんですわ、わたしは快楽の楽しみの為なら、全人類を滅ぼしてしまえる、そんな全てに飽き、全てに楽しみを見出す、愚かしいほどまでの希望的存在ですので」

「そして我は全てに飽き、全てに苦しみを詰まらなさを下らなさを不快を、そういう負の感情を感じるのだ、賢しいまでの絶望的存在であるな」

「貴方は対極です。だが敵対することはありえない。私達はお互いがお互いに希少な存在。巡り合えた奇跡に感謝せずにはいられない」

「それはそなただけであろう。我はそなたを楽しみこそしろ希望とはできぬ。何も変わらんのだよ」

「なぜ?貴方は私を心地よいと思うのでしょうか?」

「それも当然の反応だ。絶望を、そなただけには見出せないのだ、ただそれだけの話だ」

「それは、愛の告白と取って宜しいのでしょうか?それも絶対の永遠の?」

「そう取ったところで意味はないが。恐らくは生涯ただ一人、無為に話したいと思える対象はそなた一人であろうな」

「ふふ、それは嬉しい限りですわ、これからも末永く仲良くしてくださると助かりますわ」

「それはこちらこそ願いたいところだ。そなたの悪戯に戦役を拡大させる。狂おしいまでの戦闘、闘争に対する熱は、我の悲願達成にも、いかほどか寄与する。全人類の消滅と先ほど言ったが。我はそなただけは別に存在しようがしまいが、根本的にはどちらでも良いと思っているのだからな」

「ありがたきお言葉ですわ。わたしも貴方が貴方であらせられる限りは、それなりの忠誠を誓うことを、いま此処で再び、お約束しますわ」

「ふ、わたしが私でなくなるなど、私などでは想像ができぬが、まあその時は別に殺してくれて構わんぞ。どの道、この世は既に定められた規定路線を一本道で走り続けるだけだ」

「悟りきるにはまだ早いですわ、そもそも悟りきるなどと、人間風情ができる分けないのですからね、それはもちろん承知の上でしょうが」

「さよう、悟りきった気になること、それのみが重要と、そういう事でもあるのだからな」

「ええ、ではわたしはまだまだ、やるべき事が、やりたい事があるのでこれでおいとましますわ、また偶然この広大な宇宙で近場に出会う機会がまたありましたら。またこのようにお話していただけますか?」

「もちろんだ、それは先ほども言ったであろう?この全宇宙で心地よく感じる存在はそなただけだと。わたしも心の精神の強さにはこの世でも最上位、至高の位置に格する自覚はあるが、永遠にこれは完璧完全にはならぬ、そういう難儀な代物よ。もっともこの宇宙で効率よく精神の階層を積み重ねるのに、そなたとの邂逅は割と効率と安定的な供給性が高いのだ」

「ふふ、わたしと貴方は利害が一致するという事ですか、同じ様に私も貴方を精神の次元を上げる為にうまく利用させていただいておりますわ」

「うむ、私はそれほど緊要の自体がない限りは、後方で画策するつもりである、前線での振舞いはそなたの方が上手であろう、頼むことが多くなりがちで忍びないところなのだ、このくらいの一方的奉仕はやぶさかではない」

「そうですか、ならば存分に甘えさせていただきますわ、ミヒャエル様」

「ああ、ナルディア殿、こちらも重ね重ねよろしくお願いする」

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