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早速のお気に入り登録ありがとうございます!ただプロローグから文体が全く別のものになります、すみません;
どうしてこうなった\(^o^)/
まさに今の気持ちはこうである。
心踊る新学期、担任に新入生の歓迎役を依頼されました。
それはいい。いいんだ。
一つだけとはいえ、年下はかわいいものだ。まして中身がおばちゃんな自分にとっては子ども同然。二つ返事で引き受けましたとも。
先生に言われて断るという選択肢なんかはじめからないですけどね。そこは気持ちの問題である。
ではなぜオワタなのか。
その前に自己紹介をしたく思います。
私の名前はマルクライン・ディル・コングレンス、マークと呼んでください。
現在ゲイルラッド王国の王立カインクラッド学園高等部騎士科守護騎士コースに通う2年生の16才です。
家は侯爵家で裕福、両親は健在で領民からの評判もなかなか、兄は立派な後継者になるべく父に着き勉強中。双子の弟妹も元気で穏やかな家族です。次男の自分は食い扶持を稼ぐため騎士となることを決意、なんてこの世界では稀によくあるタイプの人生を歩んで来ましたが、人と違うのが所謂転生者でございます。
前世では地球、日本のOL、少しオタク気味のアラサー干物女やってました。何の因果か事故に巻き込まれ気がつけば今の世界に転生していました。
性別が変わって。
何かと思いましたね。しかしなってしまったものをアレコレ言うのは無駄だと割り切り、ただし恋愛はもう一生ないから趣味に生きる決意を固めました。女の子は可愛いけど恋愛感情はナイナイ。男同士は前世は苦もなく見てましたがリアルになるとキツイです。
趣味が何かと言うと料理です。何せこの国というか世界。食があまり発展していないんです!飽食の時代に生きた日本人としては、とても耐えられない環境でした。
例えるならイタリアが存在しなかったヨーロッパといえば分かるかもしれません。美食国家フランスの切欠はイタリアのお姫様です。では今の状況は?と言うと、その前。もしくはイギリス、よくてフリッツ公がジャガイモ導入する前のドイツ。つまりは食べてれば何でもオッケー。マナーが辛うじて存在する程度。栄養バランスなんて後から生まれた学問は存在しません。肉、肉、肉!
……耐えられない。
幸い次男だったこともあり、家族には珍しい趣味の変わり者として受け入れてもらえました。胃袋を握ったのが大きいかな。貴族だからって肉三昧な考えは許しまへんで。
とはいえ使用人の仕事を奪うことは出来ないから、あくまでも趣味止まりなのが残念です。
今や厨房の料理人とは料理研究仲間として身分を越えた付き合いがあるから気楽に出入りしていますけどね。
現在は王宮の要人守護騎士となって、まずは王国のトップから食生活の充実を広めようという野望を抱いています。食文化の向上で他国から一目置かれますよ~とね。
結構上の侯爵家出身で、むしろ自分の方が守護騎士必要なんじゃないか?と言われるほどの身分だから、王族の中でも要になるお方の守護騎士になれるんじゃないかなと期待もしています。次の次の王位継承者も同学年で仲も悪くないですしね。
そんな自分ですが。
新入生の歓迎役と同時に、隣国からの留学生の案内役も任されました。
そこで気付いたんですよね。
ここ、乙女ゲームの世界だと。
前世で友人から借りて一度だけ遊んだ乙女ゲーム、『ガーデン~君が繋ぐもの~』の攻略対称に、自分の名前がなかったか?と。
言い訳をさせてもらえるならば、借りたときはとりあえずオススメキャラの攻略をして返したけど、それが後輩だったものだから今まで接点がなかったんです。
その後輩というのが成績優秀なちょっと嫌味な首席キャラ。
友人曰く、こういうのがデレるのがたまらない、だそうです。まあギャップ萌えってありますよね、うん。
自分の好みのキャラがサポート役で、落とせないバグと言われるキャラだったからあんまり熱意を持ってプレイしなかったんです。
外に出かけるよりもサポートとお話してるほうが楽しかったんですよ。
この『ガーデン~君が繋ぐもの~』というゲームがどんなものかというと。
主人公は隣国との友好関係の証に行われる交換留学生の一人となる。様々な出会いの中で学園生活を送るが、なんと国同士の緊張感が高まってしまう。主人公は戦争回避しつつ、期限の半年で意中の相手を落とせるか、というものだった。ちなみに逆ハーレムはありません。大団円はあるらしいけどね。
必要なパラメータを上げていくことでイベントが発生し、選択肢によって好感度を上げたり戦争回避フラグを回収していくことになる。
パラメータが必要な時期に必要な数値に達していなければその後は当然イベントが発生しなくなるし、大きなフラグ3つを回収しなければ開戦=即バッドエンドとなる。
攻略対称は王太子の第一王子、生徒会長(なんと王子ではない)の先輩、案内役のクラスメイト、ツンデレ後輩、秘密のある養護教諭、シークレットで王子のお付き…だったはず。
この中の案内役のクラスメイトがマルクライン・ディル・コングレンス、つまり私だったんです。
ですがその性格は今の自分と全くの別物。
チャラ男枠というのか、女好きなキャラだったんですよね。
どうしてこうなった\(^o^)/
実はクラスも違います。ゲームでは騎士科ではなく魔法科でした。
そう、魔法があるんです!
自分には魔力が一般人レベルのそこそこしかありませんから学科に選ぶほど使えませんでしたけどね。種火を起こしたり、水を出したり、食料品の冷凍保存をしたり、飴細工をやりやすくしたり……まあそれぐらいです。ちなみに属性なんてものはありません。全て魔力量と想像力がモノを言います。
想像力豊かという意味で魔力量が少なくても魔力運用に適性は高いので、平均的に高い能力を求められる守護騎士コースにいられますけど、本来なら魔法科で学べたはずなので、成り代わった影響なのでしょうか。あ、ちょっと今までで一番ショックです。
魔法がある世界なんですから、思いっきり使いたいじゃないですか。でも魔力が足りないしと諦めていたというのに、衝撃の新事実発覚です……。
料理に困らないぐらい使えればいいだろということなのでしょうか、神様?いるかも知りませんけど。
そんなわけで、知らず知らずの内にフラグブレイクをしていたはずなのですが、なぜクラスメイトではない自分に案内役が任されたのか?
答えは簡単。
身分です。
交換留学に参加する生徒は、言うなれば人質に近い扱いとなるのが現実です。それなりに価値のある、しかしいざというときには……となるぐらいの、もしくは相当の熱意ある生徒をお互いに送り合うのです。
当然案内役にも相応の身分を求められるというわけですね。
それに交換留学生って主人公だけじゃないですから。騎士科に来る人もいます。もちろん魔法科と、話題に出ていない技術科からも案内役は選出されています。
そんなわけで、ゲームの流れ通り自分にも案内役が割り振られたのでしょう。
寮生活を送る男子生徒のフォロー役が変わる理由はありませんしね。
これからの学園生活を思うとため息が漏れますが、やるしかありません。
主人公が起こす騒動に巻き込まれる学園がどうなっていくのか。
今、自分の中では確信している恋愛はないという考えが、主人公である少女に出会うことで何か変わってしまうのではないか。強制的に引きずられてしまうのでないか。
不安ばかりで憂鬱です。
別に料理に掛けられる時間が減るなとかなんて思ってませんよ。
本当ですよ。
それでは明日の歓迎セレモニーの打ち合わせに逝ってきます。