冥美
風邪でぶっ倒れています。なんかもう起き上がれないぐらい体中が痛くて......なんとか1話書きましたが、次回の更新も遅くなりそうです。アイデアはあるので早く書きたいのですが......
「ようっっっやく一週間が終わった......」
金曜日の放課後。緩井さんの運転する車で家に帰ったレナは、部屋に入るなりベッドの上に倒れ込んだ。
「まだ終わっていませんよ。宿題がたくさん出たのでしょう。早く終わらせてください」
ベッドの上でゴロゴロするレナを見て、緩井さんはため息をつく。
「少しは休ませてくださいよ......今週本当に大変だったんですから......」
確かに、今週は色々とあった一週間だった。それらを書き出してみると――
月曜日:皆さんもご存知の通り、レナの初登校の日。ホームルームにてクラスメイトを吹き飛ばす。
火曜日:噂を聞きつけた生徒たちが学年中からレナの元へ殺到。昼休み中ずっとトイレの個室にこもる羽目に。
水曜日:魔法戦の授業の模擬戦で挑戦者が多すぎ、授業中一切休みなしで戦い続ける。
木曜日:昨日の魔法戦を面白がった佐野先生が「レナ対クラス全員のバトロワ」を開催。逃げまくって勝利。
金曜日:体育祭の準備でグループ活動に参加し、爆死。
……こうやって見ると、ほとんどレナに原因があるように思えるが、そこには触れないでおこう。
「だから今日は夜ご飯まで寝かせてくださ......」
「駄目です」
寝ようとするレナの布団を剥ぎ取り、放り投げる緩井さん。しかしレナは魔法で布団を奪い返し、また潜り込んだ。
その様子を見た緩井さんは、諦めたように小さく肩を竦めると、メイド服のポケットから小さな箱を取り出した。
「本当は使わせたくないのですが……今日だけは冥美を使ってもいいですよ。修理に出していたのが届きましたので」
「え、ホントですか!?」
レナの目が一気に輝く。
「はい。魔力抑制の腕輪と一緒に技神様にお願いしていたでしょう? あの方が“完璧に直した”と今朝届けてくださいました。レナ様も慣れない環境でよく頑張りましたから、今日だけは特別です」
「緩井さん、ありがとうございます!」
レナは箱を受け取り、勢いよく開けた。中には、十センチほどの小さな黒い球が一つ入っている。
「おかえり、冥美!」
その言葉に反応するように、黒い球がかすかに光った。
「マスター、只今戻りました」
球体から透明な羽のようなものが伸び、ふわりと宙に浮かび上がる。そして、レナの前にふわふわと漂いながら、どこか中性的な声で言った。
「久しぶりです、マスター」
自律思考ロイドM-18――通称、冥美。
魔法と機械を融合させた、世界にひとつだけの存在だ。
昔から魔法技術とAIを組み合わせようという試みは多くあったが、魔法の原理が不明瞭な時代にはそれは不可能だった。
しかし、近年になって魔力構造の解析が進み、ようやく人の思考を模す魔法回路が作られるようになった。
そしてその結晶こそが、レナと技神の共同研究で生まれた冥美なのだ。
「冥美〜、宿題手伝って〜」
「えぇ……面倒くさいです」
「そんなこと言わないでさぁ〜」
「マスター、それでは宿題の意味がないじゃないですか」
冥美は人間とほとんど変わらない反応をする。むしろ、人間よりもしっかりしているかもしれない。
「うぐ、それは正論だけどさ...少しは手伝ってくれてもいいんじゃない?」
「はい、このままだとレナ様がストレスで爆発してしまいます。それの後片付けをするのは私達ですよ、冥美」
緩井さんも珍しく宿題を手伝わせることに賛成だ。
「私はマスターの努力を信じています」
「信じなくていいから、少しくらい助けてぇ……」
ちなみにこのようなやり取りはもはや日常だ。ICMからの任務の時も、基本レナは冥美に泣きつく。そろそろ成長してほしいと冥美は思っていた。
「まあ、そういうことですので」
冥美はそう言うとシャットダウンモードになる。コトリと地面に落ちた黒い球を見てレナは、
「わぁ、逃げるな〜、このポンコツAI〜!」
そう叫んだが、冥美が反応することはない。
「レナ様、手伝ってあげるので一緒に宿題やりましょう」
本気で涙を流すレナを見て、緩井さんはそう言ったがレナの怒りが収まることはない。
喚くレナと沈黙する冥美、レナの機嫌を直すのに忙しい緩井さんよそに、金曜日の日は落ちていくのだった。




