ホームルーム爆破
どうもHALです。一回間違えて消してしまったのでもう一回投稿しました
「ふぅー、なんとか間に合ったー」
レナは昇降口にて安堵の声をあげた。残念ながらレナには背後に倒れている生徒たちのうめき声は聞こえていない。能天気に時間に間に合ったことを喜んでいる。
「そう言えば、このあとどこに行けばいいんだろ。職員室かな?」
レナがそう思い周りをキョロキョロと見渡すと、見覚えのある顔が目に入ってきた。
「あ、レナさん。良かった、探したんだよ」
佐野先生だ。今日は魔法科の授業で実習があるのか青色のジャージを着ているが、トレードマークの丸眼鏡は今日も健在だ。
「あ、佐野先生。私ってどこに行けばいいんですか?」
「んー、とりあえず教室行っちゃおうか」
そう言って佐野先生は階段の方を指さした。階段を登りながら話をする。
「思ったよりも来るの遅かったから心配したよ」
「すみません...アラームを午前と午後を間違えてかけちゃってたみたいで......」
「ははは、あるあるだねぇ」
そんな話しをしていると階段を登りきっていた。レナのクラスの2−4組は階段を登ってすぐのところだった。
「とりあえず、窓側の一番うしろの席に座っておいて。僕は職員会議があるから一旦職員室に戻らないといけないんだけれど、先に座っちゃってていいよ」
「はい、窓際のあの空いている席に座っちゃっていいんですね?」
「うん、それじゃ」
そう言って佐野先生は階段を降りていった。レナは教室のドアを開けると、その一歩目を踏み出した。
教室に入ると同時にたくさんの声が聞こえてきた。
「今日の1時間目、数学だってよ。だるいわー」
「ねえ見て、今日髪巻いてきたんだけど、分かる?」
高校生の何気ない会話だ。しかし、普段人と知らない人と話さないレナはその会話する声達に気圧されながら席についた。
「ふぅー、なんとかなったぁー」
机で一息ついて落ち着くと、レナは教室中から視線を感じた。気になって顔を上げると教室中の生徒がレナのことを見ている。
「あの子、先生が言ってた転校生じゃない?」
「うわぁ、すごい綺麗な白い髪......どこに国の人だろう?」
その声を聞いてレナは自分の髪がとても注目を集める色だったこと、そして自分の人見知りとコミュ障を思い出す。たくさんの人の視線に汗が止まらないレナ。思わず気絶しそうになる。
その時、一人のツーブロのちゃらそうな男子がレナに近づいてきた。
「ねぇ、君どこから来たの?髪すげぇきれいな色してるね」
その男子はレナの机に手をつくと、ナンパっぽい口調でそう聞いてきた。
「ちょっとー、恭平。来たばっかの転校生にまでナンパしてるんじゃないわよ」
ナンパだった。しかも女性生徒の様子から色んな生徒にナンパをしているようだ。
「ん、どした?大丈夫か?」
返事のないレナにそのチャラ男...恭平はもう一度声をかけた。だが、残念ながらレナは沢山の人からの視線と知らない人に声をかけられたことによって気絶寸前であった。
「あ、あの...」
小さく声を出すが教室の喧騒のせいでみんなには届かない。
「まあ、いいや。あとで一緒に飯食べようぜ」
そう言って恭平がレナの肩に手をおいた瞬間、レナにかかっていた極度のストレスがついに破裂してしまった。
「きゃっ」
レナがそう小さく悲鳴を上げると同時に、
ドーンッ!
爆発音がしたと思うと、恭平はふっとばされて教室の反対側まで飛ばされていた。教卓におかれていたプリントは宙を舞い、教室には埃がたちこめる。
「え、なになに?」
「何が起きたの?」
「恭平どこいった?」
みんなが口々にそういう。
「うお、いってぇ......」
「あ、恭平いた」
恭平が机の山の中から這い出てきた。特に大きな怪我はなさそうだが、セットされた髪はぐちゃぐちゃに崩れてしまっている。
「あ、あの...だ、大丈夫ですか......?」
レナは思わず起こしてしまったことに動揺しながらも、恭平に向かってそう話しかけた。というか、今日一日で2回も人をふっ飛ばしているのだ。もう少し心配したほうがいい。ところが、
「はははっ、すげぇなお前。今のどうやったんだ?」
「はは、恭平ナンパしてふっとばされてやんの。今までで1番ヒドいナンパなんじゃね?」
帰って来たのは笑い声だった。
「あの、皆さん...」
レナは心配してそう声をかけるが、その声は教室の笑い声にかき消される。その様子を見て、レナも思わず笑ってしまった。
「あはははっ!」
しばらくみんなでそう笑い合っていたのだが、佐野先生の「何をしてるんだ?」の声で教室が凍りついたことを書くのは蛇足だろう。