ダイナミック登校
日はあっという間に経ち今日はレナの初登校日、なのだが......
「うわぁぁぁぁ!落ちるぅぅぅぅぅ!」
レナは上空1000mの高さから落下中だった。
「誰か助けてぇぇぇぇ!」
なぜ朝っぱらからこんな叫び声を上げるハメになったのか、その理由は昨日の夜まで遡る。
◆
「では、レナ様。さっきもいいましたが、明日は私は大阪の方に出張でレナ様を学校にお送りできません。ちゃんとご自身で起きて、学校に行ってくださいね」
昨日の夜、レナの部屋にて。教科書達をカバンに詰めているレナに、緩井さんがそう話しかけた。
「うぅ......やっぱりその出張ってキャンセルできないんですか......?」
「無理です。国からの依頼なので」
「学校に行くだけで失神しそうなのに......その上一人で行けって、緩井さんには人の心ってものがないんですか?」
「残念ながらないようです」
「......」
必死ですがりつくレナに、そう冷たく切り捨てる緩井さん。悲しみにくれるレナに、ふと思い出したかのように緩井さんが言った。
「あぁ、そうだ。レナ様、アラームは絶対にかけておいてくださいね。明日は自分で起きないといけないのですから」
「あぁ、それならちゃんとかけましたよ。ほら」
そう言ってスマホの画面を緩井さんに見せるレナ。
「それなら良かったです――」
その時はそんなやり取りをして終わったのだが、ここに落とし穴があった。なんと、レナはアラームを書ける時、午後と午前を間違えてアラームをかけてしまったのである。午前七時のアラームをかけたと思ったはずが、それが鳴るのは夜の七時。これでは起きれるはずがない。
幸い、レナのことを心配した緩井さんが忙しい中時間を作って電話をしてくれたことで起きれたのだが、そのときにはすでに八時ジャスト。陽光学園は八時半までに登校しなければいけないのだがレナの家から陽光学園は1時間はかかる。このままでは間に合わない。
そんなレナがとった策が飛行魔法で空を飛んでいくことだった。これならば二十分ほどで学校につける。そう思って意気揚々と空へ飛び出したのだが......
「うわぁぁぁ、助けてぇぇぇぇぇ!」
このざまである。そもそもレナは運動神経があまりよろしくない。案の定学校の
上空で止まった勢いでバランスを崩し、校庭へ向かって落下。そして叫び声をあげているのが今の状況と言うわけである。
◆
「おーい、お前ら。あと一分で門閉めるぞー」
俺の名前は斎藤拓海。しがない体育教師だ。ちなみに今年で30になるが、彼女はいない。そんな俺の朝の仕事は校門に立って生徒たちの服装をチェックするのと時間になったら門を閉めることだ。
「やべ、いそげ」
「遅れたら校庭十周だからなー!」
俺はたとえ一分の遅刻であろうと許さない。その一分の遅刻が社会に出た時、致命的な問題となるのだ。だから、俺は今日も心を鬼にする。
「よし、八時半だ」
時間は八時半ジャスト。俺は門を閉めようと門のストッパーを外した。その時。
「......うわぁぁぁぁぁ!」
空から悲鳴のようなものが聞こえてきた。
「ん、何だ?」
疑問に思って空を見上げる。すると......
◆
ズドーン!
朝練の生徒たちの声が聞こえる平和な朝の陽光学園。そこに突如大きな爆発音が響いた。
「うわ、何だ!?」
「なに、あの砂煙!?」
校門の近くでモクモクと砂煙が上がっている。騒ぎを聞きつけ生徒たちも集まってきた。
「何だ?女の子?」
煙が晴れると、そこに現れたのは上空千メートルから落下して伸びているレナ、そして下敷きになっている斎藤先生だ。
「うぅ、痛たたたた......って、なんでこんな人がいるの!?」
頭を擦りながら起き上がったレナは、周りの生徒達を見て悲鳴を上げる。なんとか着地できたと思ったらたくさんの視点が自分に向かっているのだ。レナにとっては課題の提出期限を勘違いしていたことよりも恐ろしい。
「きゃっ」
レナは顔を手で覆うとした。だが残念、レナは魔力を抑えている腕輪が着地の衝撃で外れていることに気づいていなかった。結果レナが顔を手で覆った瞬間、
ドカーン!
またもや大爆発が起き、周囲の生徒たちはふっとばされてしまった。皆気絶してしまっている。
「ふぇ、なんでみんな寝てるの?」
レナは自分のやったことに気づかず、顔をあげてそう言った。
「まあ、いいか。って時間やばい!急がなきゃ!」
レナはそう言うと立ち上がり、下敷きになっていた斎藤先生の頭をしっかりと踏みつけて昇降口へと走っていった。
書いていて思ったこと→レナのやってること、ヤバない?