陽光学園からの帰り道(短いので間話ということにしておきます)
長くなりそうだったので一回切りました。次からついに高校編。ようやく高校生活がかけるぜぇ!
「うぅ、やらかした......」
陽光学園からの帰りの車の中で、レナは頭を抱えて自己嫌悪に陥っていた。
「陽光学園から緊急の要請があったので行ってみたら......まあ、予想していた通りだったので驚きませんでしたけれどね」
運転席から緩井さんも呆れたようにそう言った。
レナが実習場の壁を吹き飛ばしたあと、陽光学園はてんやわんやの大騒ぎになった。何しろ一度も壊れたことのないバリアが破られたのだ。ICMまで駆けつける事態となり、学校も数日間休校になる羽目となった。
「というかその腕輪、何のためにつけてるんですか。たしかそれ、魔法の出力を抑えるものでしたよね」
「うぅ、これ以上私をいじめないで......」
レナの体質は特殊である。現代の人間は誰しもその脳に魔経と呼ばれる器官を持っている。その魔経が空気中の魔力を集め、それを操ることで人々は魔法を使うことができるのだ。
しかし、レナの魔経は少し特殊である。通常、人はその体の中にしか魔力を貯められないが、レナの魔系は魔力を集める力が強すぎるあまり、体の外側にも魔力をとどめてしまう。わかりやすくいうと、レナは体の外に大きな魔力タンクを持っていることとなる。すると何が起きるのか。魔法を普通に発動しようとすると、あまりの出力に魔法が暴走してしまうのである。レナはそれを抑えるために魔道具の腕輪を付けているのだが......
「ごめんなさい......腕輪、壊れちゃいました......」
「えぇ!?また腕輪壊したんですか!この腕輪、技神と呼ばれるオスカー様が作ったんですよ?なんで壊れるんですか!」
「ごめんなさい......わかりません......」
オスカーとはトゥエルブ・セインツの一人で、その卓越した魔道具作りの才から技神と呼ばれている。今世界で流通している魔道具の4割は彼の作った魔道具が元だと言われているほどなのだが......
「オスカー様に言うの、レナ様がやってくださいよ。私、この間みたいに一日中お説教くらいたくありませんよ」
「えぇ、私行かなきゃいけないんですか。あの人、魔道具に関してものすごく怖いの知ってるじゃないですか。助けてくださいよ!」
魔道具づくりに対する熱量がいささか強すぎるあまり、周りから若干引かれているのは言わないでおこう。
「それよりも、」
緩井さんは嫌な話題から話をそらそうといったようにレナに話しかけた。
「最初の登校日は来週の月曜からですからね。本当は今週の水曜日だったのですが...まあ、貴方が学校を吹き飛ばしたのでそれは忘れてください」
「はい......」
陽光学園からの帰り道。車の中にはとても重い空気が漂っていた。
ちなみに、
この世界の魔力は何でもできる奇跡の力ではありません。魔力と呼ばれる目に見えない空気みたいなものを操ってるに過ぎません。まあ、つまるところ念動力みたいなものです。それを使って空気を思いっきし圧縮すると水が生まれ、魔力を全力で擦ると火が生まれる。まあ、そんな風に創意工夫をして魔法が生まれてるってわけです。