闇が動き出すが、引きこもり魔女にとっての敵は始末書である
どうもHALです。
「あーあ、結局瞬殺で終わっちゃったよ。面白くなりそうだと思ったのになー」
暗い部屋の中。机に置かれたパソコンに映る映像を見ながら、その声はそう呟いた。男とも、女ともとれる声。明るい口調なのに、何故か不気味さを感じる。
「だから言ったじゃない。中途半端なやつをトゥエルブ・セインツにぶつけたって意味ないって」
暗い部屋で気づかなかったが、もう一人いるようだ。声からして、女性だろうか。2つの人影が、パソコンの光に映し出される。
「でもさ、あいつあのMMの研究員だったんだぜ。少しはやってくれると思うじゃないか」
「MMって、あの悪魔の実験と呼ばれたやつ?うそ、MMの生き残りって残ってたの!?」
MM...何かの略称だろうか?話の内容的にはなにかの実験チームやプロジェクトの名前のように聞こえる。
「まあ、その裏切り者だったけれどね。驚いたよ。白木レナの偵察をしていたら、信じられないような思考が飛び込んできて」
暗くてあまり良く見えないが、肩のあたりで両手を広げるような仕草をしている。外国人だろうか。
「へぇ...それにしても、あなたの精神魔法ってホント便利よね。」
「脳への負担が大きいから長い時間は使えないけれどな。それでも思考を、読むくらいは常時できるぜ」
「私も使ってみたいわ、それ」
女はもう一人によりかかるようにしながら、そう言った。
「辞めといたほうがいいぞ。どうせ使えてもすぐに死ぬだろうしな。そんなことよりもまた面白い情報を持ってきたんだ。聞きたいか?」
「え、なになに?それでつまらなかったら容赦しないわよ」
「任せときなって。今度のトゥエルブ・セインツの会議でさ......」
◆
「冥美ぃ、助けてぇ〜」
「駄目です。自分で書いてください」
「そんなぁ、ケチ臭いこと言わないでさぁ〜」
体育祭の事件から一日後、レナは始末書の山に追われていた。
「この量、絶対今日中に終わらないよぉ〜」
「頑張ってください」
「うぅ、薄情すぎない...?」
机の前には積み上がった書類の山。軽く見積もっても15センチはある。その中身は、人目がつくところでドンパチしたことの他にも、校庭につくった大きな穴、第一級魔法を無許可で使用したことなど様々だ。
「緩井さぁぁn」
「手伝いませんよ」
「......」
言い切る前にバッサリと切られるレナ。
「今回の件、私にもかなりの負担がかかったんですから。相手を舐めてないでさっさと倒してくれたら良かったのに」
「すみません......」
今回、レナがこんなにも怒られているのは、レナが舐めプをしていたせいでもある。今回の場合、普通に初手から拘束魔法でも使っておけば、魔力差のお陰で簡単に自体を収拾できたのを、レナは謎にテンパって使わなかった上に、テンパってるのを隠そうとして変なテンションになったりと、本当にトゥエルブ・セインツなのか疑いたくなるようなミスばかりをしている。一応、生徒に怪我はなかったし、レナがトゥエルブ・セインツであることはバレなかったが、それでも渡らなくてもいい危ない橋を渡ったことには違いない。
「お陰様で来週の土日は支部に報告にいかなければなりません。良かったですね、レナ様」
「そのうえ、今度のトゥエルブ・セインツの会議とも日程が被ってます。会場は日本。良かったですね。皆様からたくさんイジってもらえますよ」
「うぅ、もうやだぁぁぁぁぁ!」
何故か楽しそうな緩井さんと冥美とは対象的に、降り注ぐ不幸の連続に、思わず叫んでしまうレナだった。
一応補足。体育祭の事件は不審者の襲撃事件として一応まくは閉じました。捜査はICBMに一任するよう、ICBMの上層部が警察に圧力をかけたため、ICBM側での隠蔽が可能になったことにより、様々な辻褄をあわせています。犯人は気絶はしてましたが生存、ICBMが身柄を引き取り、その後警察に受け渡される予定。学校は捜査のため二週間ほど休校になったそうです。




