学校に行こう①
どうもHALです。
さて、リメイク前のバージョンでもあった高校見学ですが、若干内容を変えさせてもらっています。というか、レナが暴走したのが原因ですね。本当に扱いづらい主人公で困ったものです。それでは......
「......で、どうするんですか?レナ様」
「......」
「答えてください」
「......」
レナはあくまでだんまりを貫く姿勢だ。その様子を見て、緩井さんは今日何回目か分からないため息をつく。肺が空っぽにならないか心配になる頻度だ。
おっと、これまでの経緯を説明しておこう。と言ってもそんな複雑なものではない。引きこもり魔女のレナに、高校に通うよう促す電話がロバート会長からかかってきただけだ。ただ生粋のコミュ障、陰キャ、引きこもりのレナはそれが嫌でうだうだ言っているのである。
「行きたくない......」
緩井さんの目線に耐えられなくなったのか、レナはボソリとそう言った。
「ですが、行かなければ生活費を打ち切るとロバート会長が言っていましたよ」
「前にもらったニューヨークの戦いの報奨金......それ使えばいい」
「そのお金はレナ様が詐欺に騙されて全部なくなってしまったでしょう」
「......」
ちなみに今は午後1時。太陽の光が部屋に入って気持ちのいい雰囲気のはずが、部屋の中に流れているのはなんとも重苦しい空気である。
「とりあえず、学校の説明会ぐらいは行ってください。1週間後?でしたっけ。少しは行動してもらわないと」
「......ヤダ」
そう言ってレナはそっぽを向いた。
「はぁぁぁ......」
もう数えるのを辞めてしまったが、ここまでため息をしまくっていると、もはや緩井さんの肺活量に感心してしまう。そして緩井さんは厳しい声でレナに言った。
「学校の説明会に行かなければ魔道具創るの禁止」
「っ!」
その言葉にレナはビクッとし、恐る恐る振り返る。
「その言葉......本気じゃないですよね......?」
ビクつきながらレナは緩井さんにそう聞いた。嘘であってくれと必死に願うレナ、しかし緩井さんにからの返事は冷たかった。
「本気です。魔道具作りの道具も材料も全て売ります。もちろんこの部屋にある全部の魔道具も同じです」
「うぎゃっ、それだけはご勘弁を〜!」
レナは魔道具作りが好きだ。精巧な回路とそれによって起こる奇跡。レナがトゥエルブ・セインツになったのはその高い戦闘力が評価されてのことだが、レナは戦うのよりも魔道具を作るほうが楽しい。
「それならば説明会に行ってください。行かなければ問答無用で捨てます」
「わかりました!行くから、行きますから!絶対に捨てないでください!」
魔道具作りの道具たちはレナの命の次に大切なもの。レナは必死にそう頼み込んだ。
「別に、レナ様が説明会に行ってくれるなら捨てませんけど......絶対に行くんですね?」
「はい!絶対に行きます!だから......」
「わかりました。なら道具は説明会が終わるまで私が預かっておきます。説明会が終わったら返してあげますから」
必死に懇願するレナに、緩井さんは少し同情しそうになりながらもそう言った。
「ありがとうございます!」
レナは嬉しそうな、ホッとしたような様子でそう言った。
「ちゃんと行ってくださいよ......」
緩井さんは心配そうにそう言ったが、その言葉はレナには届いていなかった。
◆
「嫌だ......行きたくない!」
「駄目です!説明会に行ってください!」
......状況を説明しよう。まず、今日はレナが通う予定の陽光学園の編入生説明会の日。まあ、説明会と言ってもレナしか編入生がいないので実質一対一の面接のようなものなのだが。学校からは4時に陽光学園の職員室に一人でくるように言われている。
だが、それがまずかった。一人で行くことがわかった瞬間、レナは行きたくないとダダをこね始めたのだ。
「私が知らない人と、それも一対一で話せると思いますか!?」
「いいえ、思いません」
「......」
そこは嘘でもそう思うと言ってほしいところだが、緩井さんは冷たくそう言い放った。
「な、なら行かなくたって......」
レナも一瞬びっくりしてひるんだが、これはチャンスだと思い緩井さんに期待を込めて言った。しかし、
「人と一対一で話せなかろうが、説明会には行ってもらわないと困ります。生活がかかっているのを忘れたのですか?このままだと無一文で路頭に迷うことになるのですよ?」
返ってきたのは現実を突きつける冷たい言葉だった。
「うぅ......」
見たくない現実から目をそらすように俯くレナ。
「まあ、とりあえず行ってみてください。どうしても無理そうだったら、私からロバート会長に話をしておきますから」
緩井さんのその言葉に押され、レナは渋々ながらも説明会に行くのだった。
◆
私立陽光学園。それは魔法学科に特化した高校。それも数ある魔法科学校の中から国際魔法連盟(ICM)に5ランク認定を受けている。高度な魔法を学ぶことのできる高校だ。5ランク認定を受けている学校は大学を含め日本に3校しか無いことからも、陽光学園のすごさが伝わるだろう。そんな陽光学園の正門の前に黒塗りの車が止まっていた。
「帰り、絶対に迎えに来てくださいね?絶対ですよ!」
「はいはい、わかりました。迎えに来るので早く行ってください。時間に遅れますよ」
レナとレナを送りに来た緩井さんだ。ちなみに当初は電車で一人で行くはずだったのだが、レナがダダをこねて車で来た話は、長くなってしまうので割愛させてもらおう。
(早く行ってください......こっちは書類仕事も残ってるんです......これだと今日も残業確定コースなんですよ......)
車で送ったことにより残業が確定した緩井さんだが、レナにはその苦労は伝わってないようだ。
そんなやり取りを門の前でしていると、校舎から一人の男の人が歩いてくるのが見えた。制服を着ていないのでおそらく先生だろう。その人はわやわや行っているレナと緩井さんの前に立つと二人に話しかけた。
「あの、白木レナさんであってるでしょうか?」
「あっ、えっと......はい、そうです。私が白木レナです」
レナはその人に気づいていなかったのか、話しかけられて一瞬動揺しながらもそう答えた。
「僕は佐野慶太と申します。レナさんが通うことになる2−4組の担任をしているのですが、今日色々話しをさせてもらいたいと言うことでお越しいただきました」
「こちらこそよろしくお願いします。私はレナ様の保護者の緩井と申します」
佐野先生は丸メガネを掛けた優しそうな先生だった。髪は若干パーマっぽくクルクルしている。天パだろうか。
ちなみに佐野先生と緩井さんが話している中、レナは人見知り&コミュ障全開で緩井さんがの影に隠れている。
「では、ここからは僕がレナさんを案内しますので」
「はい、よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします......」
レナは緩井さんの影からひょっこりと顔をだしてそう言った。
ほんっっっっっとうに扱いにくい!物語を進めようとしてもレナがダダをこねて全然進まないんです!!!
全然物語が進まなくて、まだ学校見学すらもしてくれない。この物語、学校が舞台なのに、ここまで書いてきたものと言えばレナがダダをこねているシーンだけ!もうなんとかならないですかね......?