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狂気、そして......

ズドーンッ!


 これまでとは比べ物にならないくらい、大きな爆発がレナを襲った。砂煙と黒煙が校庭を多い、視界は一瞬にして奪われる。


「何だ!?何が起きてるんだ!?」

「皆さん、動かないで!うわっ!?」


 混乱する生徒たちを安心させようと先生たちも努力するが、あまりの爆発の大きさに、それもままならない。緩井さんの防御魔法で守られているとはいえ、爆発による揺れが凄まじく、立っているのさえ大変なほどだ。


「報告します。防御魔法に34の破損を確認。うち12は直径1メートルを超える致命的なものです」

「位置を教えて!一つずつ修復するから!」


 緩井さんと冥美は流石といったところか、冷静に被害を把握し、修復を始めている。幸いなことに、中にいる生徒と先生たちに、被害は内容だった。しかし......


「ああ、これで君は救われたんだ......これが正解だったんだ!」


 砂煙が晴れる。レナのいたところには大きなクレータができており、そこにレナの姿はなかった。跡形もなく吹き飛ばされてしまったのだろうか。


「もうここにはようはない...あとはあいつさえ殺せれば......そうすればみんなが救われる!!!」


 男の狂気は、もはや頂点に達したように見えた。爆発の後の砂煙で生徒たちには見えていないが、それでもその狂気を感じるほどの狂気。緩井さんの魔法で、生徒たちは男を見ることも、言っていることを聞くこともできない。それなのに、煙の奥にいる何かの狂気に、彼らは背筋に寒気が走るのを感じた。


「なに...これ......」

「なにがそこにいるの......」


 もはや、男の狂気がこの場を支配していた。狂気、狂気、狂気狂気狂気狂気狂気狂気......






「ねえ、何してるんですか」


 突然、聞こえるはずのない声が聞こえた。


「っ!」


 男は驚いて後ろを振り返る。そこには爆発しそうなほど、大きく膨らんだ魔力弾を、男に向けて立つレナがいた。


「なんで生きて......そうか、霧化か!」


 男は思い出す。かつて自分たちが夢を見て、そして押し付けたその魔法を。


「まさか今も使えるとは思わなかった...」


 その魔法は、本来定期的にメンテナンスをしないと、発動した途端、自らが消滅するような魔法だ。自分たちが与えた魔法とは言え、実際に使えるとは予想していなかった。

 

「それじゃ」


 大きな、大きな魔力弾が男に向かって近づいてくる。彼は反射的に防御魔法を展開した。しかし、それはいとも容易く砕かれる。


(まずい...このままだと......)


 男はすべてがゆっくりと進んでいるように感じた。スローモーションの世界の中で、男は死が近づいてきていることを感じる。


(まだ死ぬわけには......)


 男は必死に抵抗しようとする。しかし、どうやって?こんな威力の魔力弾を防げる魔法なんてない。理不尽なまでの力の前に、男は無力を感じた。


(ああ、このまま終わるのか...結局、君を救うことはできなかった......)


 魔力弾は静かに男に近づいてくる。


(いや、これで良かったのかもな...)


 男はふとそう思った。彼女のことを救おうとして来てはいいものの、結果的には自分が彼女に殺されかけている。それに、彼女は自ら男に向かって攻撃をしてきた。それは過去の彼女からは想像ができないことだ。きっと、彼女にも守りたいものができたのだろう。


(すまない......結果的に、私は君の平穏をかき乱しただけになってしまった......)


 男は目を瞑る。魔力弾をもう目の前に迫ってきた。バチバチという音と熱を感じる。


(君の平穏が、二度と失われないことを祈るよ......)


 魔力弾は、ついに男のもとへと届き、大きな音とともに、閃光が校庭を埋め尽くした。


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