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魔法戦と

「次は、運動部による部活対抗リレーです」


 体育祭も後半に差し掛かり、クライマックスが近づいてきた。ここまでの点数は赤組430点、白組470点の40点差。この部活対抗リレーは点数に加算されないが、次の組対抗の魔法戦では勝った方に50点が入る。つまり、どちらが勝ってもおかしくない、いい勝負が繰り広げられているのだ。

 当然のように会場の熱気もすごいことになっている。「頑張れー」や「まけるなー」などの普通のものから、「ぶっ◯せー!」などのちょっと過激なものもある。


「がっ頑張れー......」


 このか細くて消えそうな応援はレナのもの。周りに合わせて声を出してみたが、大声を出すことになれておらず、結局小声になってしまう陰キャの図である。


「ほら、もっと元気出せよ!」


 そう言うのは恭平だ。ちなみに彼の頬が赤く腫れているのは、昼休憩のときにナンパした女子からもらったビンタによるものである。ちなみにその女子の前で別の女子にナンパしてからナンパをしていたので、ビンタをされるのは当然と言っていいだろう。


「すごいですね...そんな顔なのに...」

「それは言わないでくれ...」

「レナさんってたまにナチュラルで人にダメージを与えることあるわよね。そういうところも好きだけれど」

「うぅ...」


 なんだか楽しそう(適当)に話しているレナ、恭平、琴葉。このまま部活対抗リレーが終わり、魔法戦に移れば、体育祭は平和に終わったのだろう。しかし、そこは問屋がおろさない。


「おーい、レナー」


 そう言いながら走って来るのは沙也加だ。


「沙也加ー、どうしたんだー?おまえー、次の魔法戦のー、選手だろー?」


 こっちに向かってくる沙也加に、恭平は両手を口に当ててそう聞く。

 走ってきた沙也加は、レナの前に立つとレナの手を掴み、レナの顔を真っ直ぐ見る。レナはなんか嫌な予感がして、顔をそらした。


「レナ、頼む。魔法戦に出てくれ!うちのチームの3年生が怪我しちまったんだ。代わりに出れるのはお前しかいない!」

「...」


 とてもとてもベターな展開に思わず沈黙するレナ。怪我した選手の代役でリレーで走ることになった主人公。そんな青春漫画に出てきそうな展開だが、残念ながらこの物語は青春漫画ではなく、主人公は引きこもりの陰キャ魔女だ。しかし、


「おいまじか、レナ。お前魔法戦にでるのか」

「すごいわね。頑張ってきてね」


 なぜか勝手に話しを進めていく恭平と琴葉。


「あ、あの私は魔法戦には...」

「よっしゃ!ありがとな!」


 断ろうとしても肯定として受け取られる始末。しかも心のそこから喜んでいる沙也加に向かって、今更「出ない」とは言いにくい。


「じゃあ、私は先に控室に行っておくからな。準備終わってからでいいから早くきてくれ!」


 そう言って走り去って行ってしまう沙也加。こうしてレナは魔法戦に出ることになったのだ。


 

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