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「……ふと、思ったのだけれど。なぜ、あたし達の身分証があるのかしら」
「どういうこと?」
「元々、あたし達はこの世界に存在しなかった。なのに、あたし達には身分証がある。いいえ、それだけじゃないわ。あたし達が住んでいるこのアパートも、元からこの世界であたし達が生きていたかのようになっている。まるで誰かに用意されたみたいに。ペンダントには世界を異る以外に、こういう身分証の作製とか、異った先で住むアパートを創り出したり、そういう機能までついているのかしら?違う世界に異るペンダントなんてあたし達の理解を超えたものなのだし、そういう機能もついているのかもしれないけれど。……もしかすると、あたし達は元からこの世界で暮らしていたんじゃないかしら。ペンダントの力は人を違う世界に異らせるのではなくて、例えば意識を違う世界の同一人物に移し替えているだけ──とかじゃないかしら。そう考えると、この違和感というか、引っ掛かりに説明がつく気がするわ」
「……」
環ちゃんの説明を聞いて、そういうものなのだとなんとなく流してしまっていたが、そう言われると確かに疑念を覚えずにはいられない。
「まあ、たとえ真実がどちらでも関係ないわね。あたし達が帰るのに支障はないでしょうから。忘れてちょうだい。優から話すことが無いなら、あたしは戻るわ」
舞依は立ち上がり、玄関へ向かう。
「千ヶ崎君から二人が喧嘩してたって聞いたけど、大丈夫?」
「それはこっちの問題よ。あなたには関係ない」
そう言い残して、舞依は部屋を後にした。




