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「お茶でも出そうか?」
「いらないわ」
そう言って、舞依はちょっとした外出用の黒いサンダルを脱いで、ちゃぶ台の側に座った。
対面に俺が座るやいなや、舞依が口を開く。
「まず、全員の超能力はわかるかしら?」
「俺が持っているのは『他人に自分の力を貸し与える能力』らしい。あと俺が知ってるのは橘さんと芽依ちゃんだけ。環ちゃんのカードは部屋を探したけどなかった。洸太君のカードは、千ヶ崎君に自分のと一緒に探してもらってる」
「……そう。……その超能力はあなたが一番持ってはいけない超能力ね」
「どういう意味?」
「そのままの意味よ。ところで、優の超能力の『力』は単純に筋力という意味だけで捉えていいのかしら」
「俺もまだ試していないから分からないな」
「仮にそうだとして、筋力を貸し与えるなんてどうやるのか想像がつかないわね。……とりあえず、優もその超能力は使わないでもらえるかしら。貸したものが必ず返ってくる保証はないのだし」
「うん。そうだね。極力使わないようにするよ」
「いいえ。何があっても絶対に使わないで」
睨みつけるような眼差し。強くなる語気。思わず後ずさりしそうになる。
「どうしてそんなに……」
「芽依と一緒よ。カードに書かれていた文だけしか情報がないから、実際に何が起こるかわからない。下手に試すこともないし、使わないに越したことはないわ」
「……できるだけ使わないようにするけど、そこまでは約束できない。人命が懸かっている状況で、俺の超能力しかその人を助けられる方法がないなら、俺は躊躇いなく使うよ」
「その状況になったら、見捨てなさい。あなたがリスクを冒してまで助ける必要はないわ」
「それは、舞依を見捨てることになっても?」
「ええ。あたしを見捨てなさい」
「芽依ちゃんでも?」
「それは……」
「……ごめん。意地悪な質問だったね。でも、俺は目の前で助けられる誰かを放っておけないよ。それがたとえ見ず知らずの他人だったとしても」
「……わかったわ。あなたの判断に任せる。でも、それであなたになにかあったら絶対に許さないから」
「うん。わかった。心配してくれてありがとう」




