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「あんな二人もう見たくないです……。うちのせいで、芽依ちゃんも舞依先輩も人が変わったみたいに、うちが知ってる二人じゃないみたいになって……。中嶋先輩、どうしたらいいですか?」
泣きそうな声だった。自分がいるだけで、周囲の親しい人が豹変してしまう。それはどれほどの恐怖だろうか。
「今のところ部屋に居てもらう以外に対処法はないかな」
「ここに居れば大丈夫ですか?」
「うん。大丈夫なはず。しばらく不便をかけるけど、超能力を制御する方法とか無効化する方法とか調べておくから。欲しいものとかあったら買ってくるし、ご飯も俺が作るし、他にもできる限りのことはするから」
「……ありがとうございます」
「俺は舞依と芽依ちゃんの様子を見てくるよ。何かあったらメールか電話で連絡してね」
「はい……」
突然別の世界に来て、帰れるかも分からない。超能力。身近な人の豹変。橘さんの顔には、不安がありありと表れていて、それを見ると俺まで釣られて不安で圧し潰されてしまいそうになる。でも挫けちゃいけない。皆でもう一度あの世界に、あの街に、あの家に帰るため。
「大丈夫。すぐ元の世界に帰れるよ」
不安を少しでも軽くできるように。そして、心が折れないように。橘さんに対しての言葉でもあったし、俺自身に対しての言葉でもあった。こんなことしか言えないけれど、慰めにはならないかもしれないけれど、大丈夫だと自分に言い聞かせていないと今にも膝から崩れそうになる。




