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インターホンを鳴らすと、少し間が空いて、鍵を内側から開ける音がした。
「あ、中嶋先輩……」
「ちょっと話を聞かせてもらってもいいかな?」
「……はい。上がってください」
橘さんの部屋の内装は、俺と環さんの部屋とそっくりだった。
「あの、これ見てください。うちの財布の中にあったんですけど」
渡されたのは一枚のカードだった。
プラスチック──いや、免許証とかと同じように紙も混ぜ込んであるみたいだ。
橘さんの個人情報が載っている。名前や顔写真や誕生日や住所など。もっとも、あくまでこの世界での橘さんの個人情報のようだ。
「裏を見てください」
「『周囲の女性から好意を寄せられる能力』超能力不正使用監視隊発行 超能力証明カード」
──これは、つまりそういうことだ。橘さんには超能力があった。女性から好意を寄せられる能力──ありていに言えば、女性にモテる能力。その能力が発動してしまって、下風姉妹が橘さんを取り合ったのだろう。
「これが本当だとして、橘さんにはこの超能力を使った自覚はあった?」
「なかったです。こんな超能力があるなんて知らなくて……」
「なら仕方ないよ。橘さんが気に病むことじゃない」
超能力を使った自覚はなかった──本人の意思とは関係なく、何らかの条件で発動してしまうのか、それとも常に超能力が発動してしまっているのか。どちらにせよ、舞依と芽依ちゃんのようなことが、街中で起きてしまったらパニックが起こって危険だ。あの二人が殴り合うほどの喧嘩をするようになってしまうのだから、効果はよっぽど強力なのだろう。不幸中の幸いは、効果の範囲が広くないことか。視界の外に逃げればいいのか、それとも距離をとればいいのか。おそらくそのどちらかだ。対処法がどちらなのかはまだ分からないけど、危険がある以上、実験をするわけにもいかない。




