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不意にドアが開いて、千ヶ崎君が入ってきた。
千ヶ崎君を見上げるというのはなかなか新鮮だ。千ヶ崎君自身も、まさかここまで身長が高くなるなんて思っていなかっただろう。
「あれ?中嶋先輩、帰ってたんすか」
「うん。途中で倒れてる子を見掛けて、ここまで運んできたんだ」
千ヶ崎君は布団の方を覗き込む。少女が目を覚ます気配はない。
「倒れてたって、大丈夫なんすか?」
「うん。しばらく横になっていれば大丈夫だと思うよ」
「そうすか。あ、そうそう。聞いてくださいよ!中嶋先輩達が出た後、マジでヤバかったんすよ!」
「何があったの?」
「中嶋先輩達が出てすぐに、舞依先輩と芽依ちゃんが橘を取り合って……」
「取り合ったってどういうこと?」
「わっかんないすよ。急に二人が狂暴化して橘を寄越せって、止めに入った俺まで殴られたんすよ」
あの二人が狂暴化して橘さんを取り合う?姉妹喧嘩?二人が喧嘩することはたまにあるけど、それでも口論だけで、あの二人が殴ったりするような激しい喧嘩をしたことなんてなかった。
「それで、三人はどうしてるの?」
「橘はあいつの部屋に押し込んで、下風姉妹はそろって二人の部屋にいます」
「一緒で大丈夫かな?喧嘩した後なら、ちょっと距離をとらせてあげた方が良いと思うけど」
「そう思ってしばらく見てたんすけど、橘を部屋に押し込んだら二人ともぱったり大人しくなって、なんか大丈夫そうだなってっ思ったんで、絆創膏を探しに来たんすよ。俺の部屋にはなくって」
そう言って、千ヶ崎君は右肘の擦り傷を見せてきた。あまり大きな怪我ではないけど、念のため処置はしておいた方が良い。
「その傷は止めに入った時に?」
「そうっす」
「絆創膏ならそこの棚の上から二番目にあったから、使っていいよ」
「あざっす」
絆創膏は、地図を探したときに一緒に入っているのを見つけていた。もしかすると、このためにあらかじめ神が用意したものかもしれない。喧嘩があると分かっているなら、そもそも止めてほしかったが……。




