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『そういえば、さっきから一人称がバラバラですけど』
『一人称?ボクのかい?』
『はい。そうです』
『なるほど。それは君の私に対するイメージが、君の中で固まっていないからだね』
「イメージ?」
『どこから説明したものか……。まず、そもそも俺は君の扱う言語を喋れない。じゃあどうして会話が成り立っているのかというと、俺が君の脳に言葉を送って、それを君が自分の脳内で変換して、言語化しているんだ。例えるなら、君の脳は受信機兼翻訳機なのさ。おそらくだけど、君の言語では一人称が複数あって、それぞれニュアンスが異なっているんだろう。この場合、見た目が重要なのだろうね。君は神というものががどんな姿なのかを知らないから、私の見た目がイメージできない。その結果として一人称が固定されないんじゃないかな。俺の姿を見れば、イメージがついて、一人称も固定されるかもしれないね』
『姿は見ましたよ。あの靄のような姿を』
『ああ、あれは違う。あれはオレが干渉した際にできたひずみみたいなものだ』
そうなると、姿は見ていない。どんな姿をしているのか、人間と似たような姿なのか、何かの動物に似ているのか、神といってもそれがどんな存在なのか全く掴めていない。一人称がバラバラなのはそれが原因か。
実体があるのなら、ぜひ一度見てみたいものだ。そもそも、神なんてものが実在するかどうかだが。実のところ、まだ神なんてものが実在するはずがないと、どこかで未だに怪しんでいる自分がいる。この神を名乗る存在は、俺の脳内だけの空想上の存在だったり、二重人格のようななにかだったりするのではないのか、と。
『それじゃあ、あの時のことはどう説明するんだい?君が初めて我の存在を知ったあの時さ』
『精神的ストレスによる幻覚だったとしたら、一応説明はできます』
『ほう。それなら君はその仮説を信じるのかい?』
『少なくとも、神が実在するという仮説よりかは現実的だと思いますけどね』
『ははは。違いないね。よし、そんな君の為に──』
突然、後ろから服を引っ張られた。
「これで信じてくれるかい?」




