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下風姉妹の部屋で集まり、二人が作ったという肉じゃがを頬張りながら、調べたことを話した。
「その超能力関係以外で、なにか違っているところはあった?」
「なかったです。隕石が落ちてくる前は、僕達が知っている歴史と恐ろしいほど一致していました」
「あたしだけカードが無い事に説明がついたわね」
カード──正式な名称は超能力認証カード。その人物の生年月日や超能力やらが書かれているという身分証明書だ。この国では、中学校に入学すると例の隕石の粉末を体内に注射し、超能力を発現させるという。舞依先輩のカードがないのは、今の舞依先輩の年齢のせいだ。
「そうだ、洸太」
千ヶ崎は何かを思い出したように懐から車の免許証に似たカードを取りだし、フリスビーの要領で僕に向かって投げてきた。なんとかキャッチし、カードを見ると、僕の顔写真が目に入った。
「これ、僕のカードじゃないか」
「お前の部屋を探したらあった」
「勝手に人の部屋に入ったのか……」
怒る気にはならなかった。あの部屋が僕の部屋だという感覚は、少なくとも今はない。それに、見られて困るような物もないはずだ。それより、僕に代わって探してくれたのだから、むしろ感謝すべきだろう。
「ありがとう」
「おう。それと、学生証もでてきたぞ。明華学園ってとこだってよ」
今度は手渡しで、千ヶ崎から学生証を受け取る。
「僕は相変わらず高校生のままなんだね」
次いで、超能力証明カードに目を落とす。
カードによると、僕の超能力は『離れている人と話せる能力』らしい。
要するにテレパシーだ。地味だ。地味なのは僕らしいとは思うけど、なんかこう、もっと男心をくすぐるようなかっこいい能力であってほしかった。ただ、使い勝手は良い方だとは思う。日常生活を送る上では便利かもしれない。
「千ヶ崎はどんな能力なの?」
「……言いたくない」
と、拗ねたように吐き捨てた。
千ヶ崎なら嬉々として自分の超能力を語りたがるだろうと思っていたのけど、この反応からしてよっぽど使い勝手の悪い能力なのだろう。僕はそれ以上聞かないことにして、他の疑問を口にした。
「そういえば、橘さんは?戻ってきてから一度も見てないけど」
皆揃って昼食を食べている時も、橘さんだけがいなかった。
橘さんの話題を出すと、皆一様に苦い顔をした。僕と環さんだけが疑問符を浮かべている。
やがて千ヶ崎が口を開いた。
「大変だったんだぜ、俺一人で……」
「何があったんだよ」
「あいつの能力がな、羨ましいことに女性を魅了するっていう能力だったんだ。しかも自分じゃ制御できないらしくって、その色香に当てられて我慢がきかなくなった下風姉妹が暴走して……」
その先は語られなかったが、まあ、大方想像はつく。
「とりあえず離れてると大丈夫みたいだから、橘は自室に籠ってもらってるんだけど、恐ろしかったぜ」
下風姉妹は二人そろって申し訳なさそうに俯いている。性格は似ていない二人だけど、たまに仕草が一致するときがあったりして、それを見ると血のつながりというものを実感する。
具体的に何があったかは訊かなかった。掘り起こすことでもないだろうし、恐ろしかったという出来事を、わざわざ聞く気にはならなかった。
「この先、超能力を使わなきゃいけない場面もあると思う。そして、いざ使うとなった時に、自分と他の人がどんな超能力かをちゃんと知っておく必要がある。だから、食後は実際に超能力を使ってみる時間にしようと思うんだ」
中嶋先輩がそう言い終わるやいなや、舞依先輩は中嶋先輩を睨みつけて言った。
「優、話が違うわ」
今の幼い姿からはかけ離れた、冷たく鋭い声だった。
「……」
ばつが悪そうに押し黙る中嶋先輩。
「根拠はあるの?」
「ある」
その言葉を聞くと、舞依先輩の表情がほんの少し和らいだ。
「そう、ならいいわ」
それ以上、舞依先輩は何も言わなかった。




