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部屋の隅に置いてあるリュックを調べると、サイドポケットに携帯と、革でできた長財布を見つけた。
財布から紙幣を一枚取り出してみる。取り出したのは一万円札だった。『日本銀行』と『日本銀行券』の文字が印刷されている。日本という国名はそのままのようだ。ただ、俺の知っている紙幣と似ているが、描かれている人物が福沢諭吉ではなく、知らない人物になっている。他の紙幣も取り出してみる。五千円札も新渡戸稲造じゃなく、千円札も夏目漱石じゃなかった。どちらも一万円札と同じ男が描かれている。
「そのお札、君のいた世界とは違ってるの?」
「うん」
「君のいた世界と同じだとは思わない方がいいよ。お札もそうだし、テレビ番組だってそう。大体は同じかもしれないけど、君の知っていることと違うことなんて、探せばいくらでもあると思う。細かい差異を一々気にしてたらこの先持たないよ」
「うん……。そうだね」
「中嶋先輩、準備できました」
外から洸太君の声が聞こえた。




