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Judgment Mythologies  作者: 篠山 翔
佐伯洸太
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太平洋戦争中の1943年1月1日。ミッドウェー海戦での敗戦後、日本軍が徐々に劣勢になっていた時期のことだった。突如、太平洋上に隕石が落下した。海の真ん中に落ちたので大した被害は出なかったらしいが、陸地に落ちて入れば都市が一つ消し飛ばされる程の規模だったという。後に神石と呼ばれるその隕石は、全て日本軍に回収された。材質を調べると、それは地球上に存在しない物質でできていることが判明した。そして、人間がその物質を血液中に取り込むことで超能力が発現するという性質が発見されると、日本軍は兵士全員に超能力を発現させた。たちまち戦況は覆り、1944年にアメリカが降伏。1950年には全ての国が日本の植民地になり、日本は世界を統一した。それで争いは終わったかのように思われた。しかし、今度は日本国内で超能力を手にした人々により殺人や暴動が多発し、それを抑えきれず政府の権力は次第になくなっていった。そんな中、ゲンチオビオスと名乗る男が圧倒的な力で超能力者達を束ね、1955年に日本の王として君臨した。日本の混乱に乗じて反乱を起こした国々も抑え、ゲンチオビオスは世界を支配する。そして暦を神石が落ちた西暦1943年を石歴0年と定め、それから現在──石歴52年に至ってもなお、ゲンチオビオスはこの国を治めている。


それ以前の歴史は、僕が確認した限り、僕達がいた世界と全く同じだった。


この世界でも織田信長は明智光秀に殺されているし、アメリカの初代大統領はジョージ・ワシントンだ。

にわかには信じられない話だが、これがこの世界の『史実』らしい。

憲法や法律に関しても、今の日本と基本的には同じのようだ。特徴的な部分としては、中学を卒業する際、ごく少量の神石を注射し、超能力を発現させなければならず、優秀な超能力に目覚めると、僕達がいた世界で言うところの国家公務員として働くことになるという制度がある。

新聞を見たところ、超能力を使った犯罪はぽつぽつと大小問わず起こっているようだけど、治安が悪いという程でもなさそうだった。超能力を国民全員が持っているのならもっと犯罪や暴動が起こっていそうなものだけれど、この国の治安維持組織──監視隊はよほど優秀なのだろう。

「洸太君」

調べ物がちょうど一段落ついたところで、環さんに声を掛けられた。

「これ見て」

と、一枚のプラスチックでできたカードを手渡される。

「超能力証明カード?」

「そう。そこに、この世界での私の超能力が書かれてる」

「『温かさを留めておくことができる能力』らしいよ」

魔法瓶みたいだ、と。そんなことを思った。

超能力というと、僕なんかは念力とか透視とか空中浮遊とか、そういうものを想起するけど、この世界の超能力は、そういった僕が思い浮かべるような超能力とは少し毛色が違うらしい。

「財布に入ってたんだけど、君はあった?」

「あ、財布は置いてきちゃいました」

一応、服のポケットに手を突っ込んでみるけど、カードはおろか何も入っていない。

「ありません」

「そう。調べ物は終わった?」

「はい」

「もし、まだ何か気になることがあるなら今調べておきなさい。明日から平日だから、調べたくても時間がなくて来られないだろうし」

「あ、今日日曜日だったんですか」

「知らなかったの?」

「はい。朝からいろいろあって、曜日とか、そういうことを考える余裕がなかったです」

ただ、考えてみれば当たり前だ。超能力以外のほとんどは、僕達が知っている世界と同じなんだから。

「無理もないか。で、調べ物があるなら待つけど?」

「大丈夫です」

「そ。じゃあ帰ろっか」


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