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僕達は夜の住宅街を歩いていく。どこからともなく聞こえてくる蝉の声とともに、少し湿った風が滲み始めた汗を乾かす。
「洸太君は、中嶋先輩のことを尊敬してるんだね」
「うん。中嶋先輩は僕の恩人で、理想なんだ。僕はああいう人になりたい」
「そうなんだ……」
「洸太君は、元の世界に帰りたいの?」
「うん。あの世界には、まだやり残したことがあるんだ。それは僕がやらなきゃいけないし、あの世界じゃなきゃできないから。……ごめん。せっかく友達になれたのに」
「謝ることじゃないよ。それが洸太君のやりたいことだって言うんなら、僕はそれを尊重するよ」
「……ありがとう」
「もうこの辺でいいよ。護衛もいるし、あとは大丈夫だから」
佐藤の言葉に呼応するように、スーツを着た護衛の男がふわりと空から降りてきた。いつから──いや、ずっと見られていたのだろう。
「じゃあね」
と、僕は佐藤に向かって手を振る。
「ありがとう洸太君。さっき僕のことを友達って言ってくれて。……また、会おうね」
佐藤は護衛の男に抱えられ飛び去った。暗闇に消えゆく彼の姿を、僕は見えなくなるまで見送っていた。




