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佐藤は、どうしてこんな人払いをするようなことをしたんだろうか。
佐藤は芝の上に腰を下ろした。僕も隣に座った。
穏やかな風が吹き去っていく。
「少し、話したかったから。君と二人で」
僕の考えていることを読んだかのように、佐藤は答えた。
「どうして、あんなに必死になって僕を助けてくれたの?」
「なんでって、目の前で人が死にそうになっていたら止めるよ。それに……僕の尊敬する人なら絶対にそうするだろうから」
「尊敬する人って?」
「中嶋優っていう人、僕の先輩だよ」
「そうなんだ。君の──。そういえば、君の名前は?」
「あ、そうか。まだ言ってなかったのか。佐伯洸太。『遠くの人と会話できる能力』よろしく」
「よろしく。僕は、佐藤玄信。『人の考えていることを読み取ることができる能力』」
人の考えていることを読み取る──さっき僕の疑問に対して答えたのも、僕の考えを読み取ったからか。
「佐伯君のは、電話要らずで便利な超能力だね」
「あら──」
新井さんにも、同じことを言われた。
そう言おうとしてしまった。無神経だった。今の佐藤に新井さんの名前を出すわけにはいかない。
いや、もう遅いか。考えを読まれてしまっているかもしれない。
「どうしたの?」
佐藤は不思議そうに僕を見つめた。
「考えが全部読めるていうことじゃないの?」
「うん……。自分の意思で制御できないんだ。たまに他人の考えが頭に流れ込んでくる感じ。だから読み取りたいときに読み取れないし、読み取らなくていいことも読み取っちゃうんだ」
「……大変だね」
「君は、僕の能力を知っても嫌がらないんだね」
「うん。だって、君は良い人じゃないか」
「でも、自分の知られたくない過去とか思いを、勝手に知られてしまうんだよ?嫌じゃないの?」
「確かに、僕にだって知られたくないことはあるよ。でも、君はそれを言いふらしたりするような人じゃないっていうのは分かってるから。嫌ったりはしない」
「ありがとう……!」
佐藤の目から涙が浮かんできた。
「ど、どうしたの!?」
「読めたんだ……。君のその言葉が、本音だって!初めてなんだ……。僕を気味悪がらずに、本心からそう言ってくれる人は……!皆、僕の超能力を気味悪がっていたから……。ありがとう……」
佐藤は泣き崩れた。ずっと孤独だったんだ。ずっと苦しんでいたんだ。佐藤は、その超能力のせいで他人と親しくなれなかったんだ。本当は、嫌われたり、避けられたりするような人じゃないのに。
「佐藤、友達になろう」
「佐伯君……。本当にいいの?」
「もちろん。弁当は一緒に食べよう。放課後になったら、二人でどこかに遊びに行こう。いつか僕の家にも来て。あまり楽しめるようなものはないけど、本を読んだり、一緒にお菓子を食べたりしよう」
「うん……!いいね!」
初夏の太陽が差すこの土手で、僕達はこうして友達になった。
ここまでご愛読ありがとうございました。次回からは中嶋優視点での物語になります。
佐伯洸太視点にはまだ続きがありますが、すみません。まだ書けていません。
というのも、2人の視点は密接に関わっているので、私の技量では同時並行で進めていかないと伏線や設定の破綻が出てしまうのです。また、後付けになる改稿はしたくありませんし、双方の物語が完成するまで期間が空いてしまうというのもよろしくないと思いました。
そこで、まだ書き途中ではありますが、既に完成している範囲まで中嶋優視点の物語を公開したいと思います。
読者の皆様、今後もよろしくお願いいたします。




