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佐藤の歩む速度が徐々に落ちていき、止まった。
僕達は鉄橋の真ん中付近。歩道は一直線。身を隠せる場所はない。僕と佐藤の距離はおおよそ十メートル。まだ気づかれてはいないようだけど、見つかってしまうならいっそのことこちらから声を掛けようかと悩んでいると、佐藤は首だけを動かして、眼下に流れる水流を見つめた。そして震えている手で欄干を掴むと、そのまま跨ぐように越えた。
──自殺。
落ちたらただでは済まない高さだ。反射的に走り出す。
僕の感じた嫌な予感は正しかった。
重心が前に移動していく。足が離れるすんでのところで、僕は両の手で佐藤の腕を掴んだ。
佐藤の体が落ちていく。腕を掴んでいた僕も佐藤に引っ張られ、胴体が欄干に激突する。痛みはあるけど、手は離していないし、一緒に落ちてもいない。




