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目を固く瞑って、ナイフが僕を突き刺す瞬間に震えていると、どこからか風を切る音が聞こえた。その音は僕の頭上まで来ると、筑波と衝突した。筑波は短く声を上げて倒れ、少し遠くで金属音が鳴った。
見ていないから詳しいことは分からないが、筑波が倒されたのだ。
一体誰が?
呼吸も落ち着いてきたし、体も動くようになってきた。顔を上げると、スーツを着た背の高い男が、縄を切って佐藤の拘束を解いていた。
大丈夫そうだ。この人は敵じゃない。
僕は体を起こした。まだ少し気分が悪いけれど、他に変調はない。
「私は平気ですから、早くこの男を監視隊に引き渡してください。昨日私を襲ったうちの一人です」
佐藤は立ち上がりながら男に向かって言った。口のガムテープは既に外されている。
「ですが、玄信様の護衛がいなくなってしまいます。事情聴取などで戻るのが遅くなってしまいますし」
背を向けていて男の表情は見えなかったが、困惑したような声だった。
「少しの間なら問題ないですから」
「先程もそう仰られていましたが……」
「いいから行ってください!」
佐藤が少し声を荒げて言うと、男は不服そうに返事をして、地面に倒れている筑波を担いだ。
そして男の両の足が地面から離れたかと思うと、そのままどこかへと飛び去っていった。




