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靴を履き替えた直後だった。
『助けて──!』
ひどい頭痛とともにその言葉が頭の中に響いた。
この感覚はテレパシーだ。でも、僕がテレパシーを使おうとしていないのにどうして……?それに、この声は昨日聞いた佐藤の声だ。
目を閉じて、佐藤の顔を思い浮かべた。初日に試してみて判ってはいたけど、やはりどこにいるか全くわからない相手になると、集中しないといけない。
ラジオの周波数を合わせるようにして探っていく。
『──痛い──助─て──』
途切れ途切れになりながらも佐藤の声が聞こえた。
「遅れちゃうよ!」
芽依さんに肩を叩かれて、集中が切れた。しかし、佐藤が危険な状態にあることは分かった。
助けなければ。遅刻は確定的になってしまうけど仕方ない。芽依さんにも……。
不意に、昨夜の環さんとの会話を思い出した。
──他人任せにしない。
そうだ、頼ってばかりじゃだめだ。
「ごめん、用事があったの忘れてた。芽依さんは先に行ってて」
「用事って?」
「いいから!」
芽依さんは渋々といった様子で頷くと、階段を上っていった。




