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日はもうとっくに沈んでいるというのに、日中のうだるような暑さが未だに尾を引いていた。
深夜に出歩くというのは、朝早くの誰もいない静かな学校と似て、気持ちが上がってくる。
普段と違うからだろうか。
中学での修学旅行の夜も、こんな気持ちになったっけ。
環さんについていくようにして、夜の住宅街を歩いていく。
環さんを見ていると、どこか見た目と中身が合致していないように思う。大人びているというか。
いや、僕達もこの世界に異った時に肉体年齢が変わってしまったように、環さんも今の見た目と実年齢が違っているんだったか。聞いた話だと、中嶋先輩達と初めて会った時は子供の見た目だったとか。
少なくとも、今の二十代の見た目より実年齢は上だろう。ああ、そういえば、環さんに超能力証明カードを見せてもらった時、カードにこの世界の年齢も書いてあったはずだ。超能力の方に気を取られていて、書いてあった数字は覚えていないけど。
楽しいことも苦いことも経験して、清濁併せ呑んだ上でのさっぱりした性格と余裕。
それは、ある程度歳を重ねないと出てこないものだと思う。
「……環さんっていくつなんですか?」
不覚にも、疑問が口に出てしまった。
こら、と脳天に軽くチョップを入れられた。
「女性にそういうこと訊いちゃダメなんだぞ」
「すみません……」
「ただ、君達よりは間違いなく長生きしてるね。いろんな……本当にいろんな世界を異って、いろんな人に会って、いろんなことを知って、そして別れてきた。それを一週間で繰り返してきたもんだから、すごく濃い人生だね……」
一つ一つの出来事を思い返すように、環さんは言った。僕のたかだか十数年の人生では到底出せないであろう重みが、ぎっしりと詰まっていた。
「まあ、そのおかげで、いろんな技術が身に着いたんだよね。料理にサバイバル、護身術、薬とか毒の知識」
「料理……。環さんも料理できるんですね」
「うん。でも、やっぱり料理って誰かに食べてもらってこそだよね。自分で作って食べるだけだと、少々味気ない。洸太君は料理とかするの?」
「いえ、全く」
思えばこれまで、料理は自分以外の人に任せっきりだった。
「だよね。今度教えてあげよっか?」
「機会があれば、ぜひお願いします」
「じゃあ昆虫とか爬虫類メインで」
「それだけはやめてください!」




