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Judgment Mythologies  作者: 篠山 翔
佐伯洸太
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『もう大丈夫です!証拠は十分撮れました!』

中嶋先輩から合図があった。

押し入れから出ようと立ち上がろうとしたと同時に轟音が──いや、音じゃない。振動だ。この家全体が地震のように大きく揺れた。

壁に手を突きながらなんとか立つ。

揺れがあったのはほんの一瞬。もう収まっている。

急いですぐ隣の玄関まで行き、そこから台所の様子を見る。

制圧はもう終わっていた。

拍子抜けする程にあっけなく。

まさか僕が来るまでの数秒の間にここまで終わらせてしまうなんて。

中嶋先輩も渡辺先生も、大して傷を負っているようには見えない。

緊張が解け、微かに頬が緩んだ。

床にはガムテープで口を塞がれ、ロープで手足を縛られた三人がもぞもぞと未だに抵抗を続けていた。

──三人?

気づくのが遅すぎた。まだだ!と渡辺先生の声が頭に響いてきたが、それも遅かった。

首が絞まり、空気を吐き出すような小さなうめき声が漏れた。

後ろから腕で首を絞められている……!

渡辺先生も動きかねている。

僕がなんとかしようにも、完全に力負けしていて、振りほどけない。

死ぬ──そう思った瞬間、なぜか首に回された腕が緩んだ。息ができる。空気を目一杯吸い込んだ

力が緩んだ今が好機だ。そう思い、全力で背後の誰かを振りほどこうとしたその時、首に冷たさを感じた。

血の気が引いていく。すぐに直感した。ナイフだ。下手に抵抗するなという脅しだ。

首を絞められた時よりも強く濃い恐怖。

首筋に押し当てられた死を前にして、僕は何も出来なかった。ただ首筋に当たるナイフの感触だけが生々しく感じる。

助けて。

誰に向けてでもなく、ただ強く願った。

「追ってきたらこいつを殺す!」

男の声だ。背後の男は玄関の方へ数歩下がる。

僕も半ば引きずられるように下がった。

背後の誰かが段差を降りた拍子に、微かに、ほんの微かにナイフが僕の首に食い込んだ。

それは僕の理性の内に押し込められていた恐怖が暴発するのに十分な衝撃だった。

頭の中が死への恐怖に埋め尽くされ、僕は叫び声を上げながら一心不乱にもがいた。

すると、あっけなく振りほどくことができた。

真後ろで扉が外れる大きな音がして、恐る恐る振り向くと、ナイフも、相手の姿もどこにもなかった。まるで最初からいなかったかのように。それでも、首に手を当てると、ナイフの感触が生々しく蘇ってくるし、未だに心臓の拍動は速い。どうしても夢や幻覚とは思えなかった──。


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