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しばらく歩いて、例の廃墟に着いた。放置された古い日本家屋だ。木製の柱が所々腐食していたり、屋根の瓦が何枚も剥がれていたり、放置されてからの年季を感じる。
門はなかった。もともとないのか、撤去されたのか。
僕達はブロック塀の途切れた所から真っすぐ進んで行った。
「できるだけ草は踏むなよ。誰かがここに来たことが向こうに分かってしまう」
「はい」
無秩序に雑草が生え伸びた庭を抜け、玄関前に行く。
戸は開け放たれていた。
玄関に入るなり、渡辺先生がスイッチのオンオフを繰り返した。
「電気は止められてるな。靴は持って上がる。砂や土を中に落とさないようにな」
「はい」
中は埃被ってはいるものの生活感があり、家具がそのまま残っていた。
「どこに隠れるかですね」
僕達は証拠の映像を撮らなければならない。ただ見つからないよう隠れるだけでは駄目だ。
家の間取りは、玄関から入って真っすぐと左に、襖で仕切られた部屋が二つずつあり、それぞれ縁側で繋がっている。玄関から入って右には台所があり、台所に入って左へ真っすぐ進むとさらに二つ部屋がある。
カメラは先生と中嶋先輩のを合わせて二つ。屋内だけでも二台で全域を撮ることは厳しいのに、玄関前の庭と、縁側から行ける裏庭もある。
「襖を開ければ、その分撮れる範囲が広がりますけど」
「いや、得策じゃない。庭を通った時、微かに誰かが入ってきた痕跡があった。三日か四日前だな。新井達が下見に来たんだろう。変に襖を開けたら不自然に思われる」
確かに新井さん達を警戒させたくはない。でも、だったらどうすれば……。
「……台所の奥の方だな」
「どうしてですか?」
「向こうの立場になってみて考えるんだ。まず、外は除外する。声が通りやすいのと、佐藤に逃げられやすいからだ。裏庭も隙を突いてブロック塀を越えさえすれば逃げれる。簡単に裏庭に出れる縁側と、縁側に隣接している部屋も除外。新井達は四人だ。全員でいたぶるのなら、狭い部屋に連れ込んでもやりづらいだろう。トイレなどの個室も除外。そうなると、残りは台所くらいなんだが、台所も玄関に隣接してる」
「だから台所の奥の方……」
なるほど、説得力がある。
「まあ、あくまでも推測だ。あいつらがそこまで考えていないかもしれないし、保証はない」
すごい洞察力だ。肉体派の細かいことは考えないようなタイプだと思っていたが、とても理性的だ。
戦争で生き残るということは、そういった頭の良さも必要になるのだろうか。




