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「そういえば、策は考えてあるのか?倉地から聞いたが、新井の超能力は厄介だぞ」
「一応、対策は考えてあります」
僕は鞄からウォークマンとそれに付いたヘッドホン。それと耳栓を取り出した。
倉地によれば、新井さんの能力は映像越しにならば無効化できるとのことだ。だけど、その映像を撮る僕達は、隠れるにしろ生で新井さんの嘘を聞いてしまうことになる。万が一見つかってしまったらおしまいだ。そこで中嶋先輩が出したのが、僕達の会話は僕のテレパシーで行い、周りの音を耳栓と大音量の音楽でシャットアウトするという案だ。新井さんの能力が嘘を聞いた相手の認識を操作するのであれば、そもそも新井さんの声を聞かなければ、あるいは認識しなければ、効果はないのではないかという算段だ。ただ、あくまで推測だ。新井さんの超能力が嘘を聞くか聞かないかに関わらないのであれば、この対策は意味を成さない。だけど、次の犯行は今日起こる。僕たちにはゆっくりと対策を練っている時間はないし、新井さんの超能力をよく知っている倉地からもお墨付きをもらった作戦だ。
「なるほど。よく考えたな」
策を聞いて、渡辺先生も賛成のようだ。
「早いですけど、もう渡しておきますね」
「ああ。ありがとう。……佐伯の分は?」
「あります」
渡辺先生に渡したのは僕のウォークマン。僕が使うのは千ヶ崎から借りたウォークマンだ。予定通りいけば、佐藤を助け出す段階で確実に新井さん達と一悶着あるだろう。その時に新井さん達を止めるのは主に渡辺先生の役割になる。千ヶ崎のは借り物だし、壊したくない。
「で、具体的に俺は何をすればいい?」
「僕達は予め隠れて新井さん達が暴行する瞬間をビデオカメラで撮ります。証拠の映像が撮れたら、佐藤を連れて逃げる──はずだったんですけど、渡辺先生、新井さん達四人を逃げられないように縛り上げることってできますか?証拠を掴まれたと知ったら、新井さん達が何をするか分からないので、できれば証拠を撮った上ですぐに監視隊に身柄を引き渡したいんですが」
「できる」
渡辺先生はきっぱりと断言した。さすが元軍人というべきか。
「俺一人に任せてくれて構わない。佐伯達は、佐藤の保護を頼む」
「はい」
僕は携帯を開き、中嶋先輩にメールを送る。助っ人の渡辺先生の超能力と、新井さん達から逃げるのではなく、制圧する作戦をとれるという内容だ。
すぐに返信が来た。
仕事が終わって今からこっちへ向かうこと、中嶋先輩が勤めている高校の近くにあるホームセンターで、縛れるような縄と嘘を吐けないようにする為のガムテープを買ってくることが書かれていた。
「中嶋せんぱ──中嶋さんが縄とガムテープを買ってきてくれるそうです」
「ありがたい。それと、彼のことは普段通りに呼んでも構わないさ。俺はそちらさんの事情を知っているわけだし、不自然に思ったりはしない」
「たしかにそうですね」
「ああ、それともう一つ」
「はい」
「ビデオカメラは用意してあるのか?倉地からある程度は話を聞いていたから、一応、俺は一つ持って来ているが」
そう言って背負っているリュックに目をやった。小さいリュックではないけども、巨漢の渡辺先生が背負っていると小さく見えてしまう。
「大丈夫です。中嶋先輩が持ってきます」




