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十分ほど経って、通り魔の話が煮詰まって一段落した。
「倉地君、一つ訊いてもいいかな?」
「はい。なんでしょう」
「たしか君の超能力は『脳を操作する能力』だよね?」
「ええ、そうです」
「それは、例えば脳を操作して、特定の状況になったときだけ普段好きではないものを好きだと思い込ませるというようなこともできるのかな?」
「できます。ただ、他人の脳を操作する場合、俺が相手の頭部に直接素手で触れる必要がありますね」
「ちなみに、その思い込みは最初の一度しか起こらない、みたいにさらに条件をつけることもできるのかな?」
「はい。できます」
そうか……それなら……。
「……それがどうかしました?」
「もしかすると前に言ってた神石が降ってきた過去を変えることができるかもしれない」
余計なことをしようとするな、という視線が左斜め下から突き刺さる。
舞依には悪いが、それはできない。
「本当ですか!?」
倉地君は目を丸くする。
「うん。でもちょっと待ってほしいんだ。俺一人の力でできることじゃなくて、協力してもらわないといけない人がいるんだ。その人の同意を取るまで待ってほしい」
「……わかりました」