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「中嶋さん、通り魔の件ですけど」
「うん」
「なぜ捕まえようとするんですか?あなたに関係なければ、あなたが自ら捕まえようとする必要もない」
「関係あるよ。俺の身近で起こっている出来事だし、誰かが止めなきゃ今後も続いていく。なにより、犯罪者が野放しになっているのは許されることじゃない。行動する理由なんて、それだけで十分だよ」
「そうですか。それでなぜ、俺なんですか?通り魔を捕まえる協力を、なぜ俺に持ちかけたんですか?」
痛いところを突かれた。
俺が真実を話したとして、倉地君はそれを信じてくれるだろうか?
環ちゃんは信じてくれた。だが……。
答えに窮していると、舞依に手首を掴まれて引っ張られた。
そのまま入り口の方へついていく。
「優、どういうつもり?」
倉地君達に聞こえないくらい小さな声だったが、刺すような鋭い圧があった。
確かに、舞依は神の存在も通り魔の存在も知らない。通り魔を捕まえるために倉地君に協力してもらうという俺の行動が不可解に映るのも無理はない。
環ちゃんは信じてくれた。
そのことが少なからず後押しになった。
通り魔のこと、神のこと、包み隠さず舞依に話した。
昨夜環ちゃんに信じてもらえたことも少なからず後押しになった。