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インターホンが鳴る。
扉を開けると、倉地君が一人立っていた。
「下に車を停めてあります」
と倉地君が言うので、この世界では高校生でも車の免許が取れるのだろうかと疑問に思いつつも、倉地君についていく。
──俺はあまり車に詳しくない。
一応、人並みの高校生程度の知識はあるが、その知識はこの世界ではなく俺が暮らしていた世界での知識で、この世界の車の知識ではない。
それでも、この世界でも車の基本的な構造は変わらないようだ。トラックや自家用車など、町中で見かける車の外見も一見しただけではまるで違和感を感じない。
しかし、トラックの荷台に書かれた企業名や、車の前の部分──フロントグリルといったか──そこについているエンブレムには見覚えがない。
そして、この車のエンブレムにも見覚えがないのだが、これだけは一目見ただけでわかった。
──この車は高級車だ。
相当入念に手入れされているのだろう。黒く塗装されたボディには傷や汚れが一つもなく光沢も出ていて、新品のように美しい。
西から差し込む夕日がその艷やかな黒をより一層際立たせている。