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部屋に入ると、ちゃぶ台に環ちゃんと舞依が座っていた。
「ただいま」
「おかえりなさい」
「あ、優君おかえりー」
険悪──というほどでもないが、和やかに談笑していたという雰囲気でもなさそうだった。
どちらかというと舞依の方が原因だろう。おそらく、舞依はまだ環ちゃんを信用しきれていない。舞依は信用しきれない相手とでも仲睦まじく話せるような性格ではない。むしろその逆だ。
舞依は机に肘をついてそっぽを向いている。
「……どうしよう、そういえば夕食作ってかった」
「そんなに長くはならないでしょ?終わってから作ればいいよ」
「どうだろう……。話は円ちゃんの作業場でってことだったんだけど、円ちゃんの作業場までここからどのくらいかかるか聞いてないから、距離によっては帰りがかなり遅くなるかも……」
失敗した。事前に確認しておけばよかった……。
「そうなの?この部屋で話をするものかと思ってた」
「ごめん、二人にそれを伝えるのも忘れてた」
「まあ、別にいいけど。皆に帰りが遅くなるかもしれないから夕飯も遅くなるかもってメールしといたら?」
「そうだね」
環ちゃんがいるからだろうか。舞依がさっき俺におかえりなさいと返したきり一言も発していない。
大丈夫だろうかと心配しつつも、芽依ちゃん、洸太君、千ヶ崎君、橘ちゃんにメールを一斉送信する。