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『それは杞憂さ』
また、頭の中に声が響いてくる。
『君達が変に行動しなければ、向こうから何かしてくることはない』
『犯人を知ってるんですか?』
『わかるさ。それくらい。僕は神だからね』
『それなら、犯人を教えてください』
『それを知ってどうするつもりだい?』
『捕まえます。監視隊が犯人を捕まえることができないなら、被害は広がる一方ですから』
『君は過去を変えようとしているんだろう?たとえ犯人を捕まえて被害を抑えることができたとしても、過去が変われば無かったことになる。被害があってもなくても、結果は変わらない。それなのに危険を冒してまでするのかい?』
──ああ。そうだ。そういうところだ。そう考えてしまうのは、やはり人ではないからなのだろう。
『関係ありません。それが犯罪者を野放しにしていい理由にはならない』
神は依然皮肉を込めたような口調で言う。
『そうかい。僕には理解できないね。しかし理解できないものを観ることもまた楽しいものだ。いいだろう。例によってヒントとアドバイスをあげよう。──犯人は明華高校の生徒だ。犯人を捕まえたいなら、倉地類を頼るといい』