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今のが環ちゃんの記憶──その一部か。目覚めてから気づく。夢を見ているような感覚に近い。そして、環ちゃんと話していた男は身なりこそ変わっていたが、間違いなく倉地君だった。
「そういうことね。理解したわ」
舞依も環ちゃんの記憶を見たのだろう。
「僕から頼みがあります。どうか、力を貸してください。もちろん、あなた方は元の世界に戻ることを優先してもらって構いません。ペンダントが直るまで、協力してもらえませんか?」
「いいわ。ただし、あたし達は元の世界に異ることを最優先に行動する。文句はないわね?」
舞依が即答する。舞依がこうもあっさりと了承するとは思わなかった。
「はい。それで構いません」
「……なによ」
目を丸くしていると、舞依に睨まれた。
「いや、なんでもない」