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「今は石歴65年。今から2年前──石歴63年、神石が遂に底をついた。軍から超能力者が減る一方だった。そして世界各地で起きた反乱──いや、復讐の炎を鎮圧する術はなかった。ゲンチオビオスはまだ生きているが、彼に従う者はもう少ない。俺達は円の所有する地下施設に逃げ込んで難を逃れていたが、もう敵がここに来るまで時間がない。環にペンダントを持たせて、この憎しみに溢れた世界から逃がす。この世界に関する記憶は、封じておく。この子には、余計なものを背負わせたくない。自由に生きてほしいから。だが、もし万が一この記憶を過去の俺が読み取ったなら、頼む。どうか……どうかこの世界を変えてくれ……!」
いつもの優しいパパとは違って、悲しくて痛々しい口調だった。まるで私じゃなくて私の中にいる他の誰かに喋っているような感じがして、それが少し怖かった。